【第14話】彼女の笑顔 ページ24
Aside
「じゃあ、まずはこいつだけど……」
私とトリエルさんが見守る中、彼は石のボタンの前で顎に手を当てる。
真剣な瞳で、私がさっき読み上げた石板の言葉を反芻しながら、短い間、思案して――
「……なんだ。随分回りくどい言い回しだけど、よく考えりゃ単純だなっ……と」
彼は、中心の二つの石を器用に避け、両側の石を軽やかに踏み抜く。
流石、頭の回転が早い。
「よし、次行くぞ!」
躊躇いなく次の間へと進む彼に、私は置いていかれないよう、小走りで続いた。
次の間では、長い廊下が途中で水路により区切られている。
ここでの仕掛けは、少ないボタンを押して、奥に仕掛けられた棘を解除するだけというもの。
あっさりと奥へ辿り着いた彼は、期待外れ、といったようにトーンの落ちた声で呟いた。
「おいおい、この調子じゃあっという間に全部解けちまいそうだぞ。こんなんで、本当に侵入者なんて撃退できるのか?」
トリエルさんは、あらあら、と困ったように笑った。
「博識な貴方には簡単すぎたかしら。困ったわね……。じゃあ、貴方たちには違った視点で、アドバイスをしましょうか」
彼女に続いたその先には、道の途中に白い綿でできたマネキンがちょこんと立っている。
綿のハートにボタンの瞳。輝いちまった喜びに。
そんな語呂のいいテキストを思い返しながら、そのつぶらな瞳に私は思わず顔を綻ばせる。
「なんだこりゃ。人形?」
エドは指の先でそれをつんつんとつつきながら尋ねる。
「それは、私が作った練習用のマネキンよ」
「練習?」
「ええ」
トリエルさんはマネキンの横に立つと、私たちを真っ直ぐ見つめた。
「貴方たちはニンゲンだから、モンスターに襲われることもあるでしょう。……さっきのように」
「……」
彼女の穏やかながらもよく通る声は、聞く者の意識を、あっという間に彼女へと引き付ける。
黙って聞かなければいけない、と自然と背筋が伸びるのは、やはり、元女王の威厳というべきか。
「そんな時にどうすればいいか、改めて知っておいて欲しいの。大丈夫、簡単なことよ」
彼女はにこやかにマネキンを撫でながら、“出会ったモンスターとは、戦わずに、仲良くおしゃべりをして欲しいの”とだけ告げた。
‟戦わずに”を強調させたその語り口に、私は少しだけ違和感を覚えた。
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アンテ民 - Hi(^-^)/そこら辺にいる雑草コト、アンテ民でこざいま〜す!((いやぁ〜大好きな鋼錬とアンテが掛け合わせに推しのかしわ様が描いていらっしゃるとね、分かった瞬間吐血しましたねハイ(((更新頑張って下さい!!! (4月15日 2時) (レス) id: 677c09749a (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - 初コメ失礼しましたマジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - マジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
さささ―(プロフ) - 初コメ失礼します見ました!ものすごい面白かったです次の話が出るまで楽しみに待っています! (6月22日 4時) (レス) id: 03f3eacb33 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ@低浮上気味本当にすみません……(プロフ) - 葛見さん» 葛見様、初めまして。そう言っていただけて大変嬉しいです……!更新が本当に遅くて申し訳ございません……頑張って書き続けますね……! (2023年4月5日 17時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2022年9月12日 21時