【第12話】熾烈の叫び ページ20
Aside
光の射さぬ薄闇、その静寂の中にひっそりと佇む紫色の古びた門が、私たちを静かに受け入れる。
彼女に導かれるまま、それを抜ければ、視界は明るみを取り戻して、紫色の広い空間に出る。
その内装は、外と比べて手入れがなされているようで、一面の石壁には、いたずらに伸びるツルや蔦はなく、線対称に伸びた階段の先、奥へと続く入り口の傍だけを緑で彩っている。
『(あれ……)』
聳え立ついせきの入口へと続く階段の下、真っ赤な落ち葉が海を作るその前に、私はきらりと光るものを見た。
あの位置は、あの光はまるで、‟セーブポイント”ではないか。
一瞬、心がざわめいたけれど、もしかしたら、皆に見えるものなのかもしれない。
一先ず、そう考えを落ち着けていると、前を歩いていたトリエルさんが、思い出したように口を開いた。
「それにしても……驚いたわ。貴方がさっき使っていたのは、魔法よね?」
まるで確信めいたように尋ねる彼女に、エドは苦笑交じりに首を振る。
「ああ、さっきの花にも言われたけどよ、オレのは魔法なんかじゃなくて、錬金術っていうものだ」
振り返ったトリエルさんは、意外そうな顔でエドの言葉を反芻する。
「“錬金術”……?」
「ああ。何でも便利に出せるような魔法とは訳が違う。しっかりと法則や原則に乗っ取った、所謂、化学技術ってやつだ」
彼はそうして、錬金術について簡潔的に説明をしてから、自身を国家錬金術師であると名乗る。
ひとしきり説明を聞いた彼女は、彼の言葉をゆっくりと飲み込むように、何度も頷いた。
「そう……そうなのね。地上では、そんな技術に……」
『?』
含みのある言い方に首を傾げれば、彼女は、ああ、ごめんなさいねと、真剣だった表情を和らげた。
「ふふ、貴方、凄いのね。感心しちゃったわ」
「いや、オレからしちゃあ、あんたが使った魔法の方がよっぽど凄いと思うけどな。錬成陣も、モーションもなしに、一瞬で痛みを治して……。あの花の弾もそうだ。本当に、どういう原理だ……?」
顎に手を当てて考え出す彼に、トリエルさんは笑う。
「ふふ、あれくらい、大した魔法じゃないわ。それよりも、まだそんなに‟小さい”のに、国家資格まで持ってるなんて、立派よ」
『!!』
「……!!!」
途端、和やかだったその場に、緊張が走る。
彼女は純粋に、彼を褒めただけだ。
もう一度言う。
彼女は、純粋に褒めただけなんだ。
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アンテ民 - Hi(^-^)/そこら辺にいる雑草コト、アンテ民でこざいま〜す!((いやぁ〜大好きな鋼錬とアンテが掛け合わせに推しのかしわ様が描いていらっしゃるとね、分かった瞬間吐血しましたねハイ(((更新頑張って下さい!!! (4月15日 2時) (レス) id: 677c09749a (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - 初コメ失礼しましたマジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
エド推し - マジ天才です!!!!!こんな神作品をつくってくれてありがとうございますッッ!!!!!! (2月24日 9時) (レス) id: 3dedb59794 (このIDを非表示/違反報告)
さささ―(プロフ) - 初コメ失礼します見ました!ものすごい面白かったです次の話が出るまで楽しみに待っています! (6月22日 4時) (レス) id: 03f3eacb33 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ@低浮上気味本当にすみません……(プロフ) - 葛見さん» 葛見様、初めまして。そう言っていただけて大変嬉しいです……!更新が本当に遅くて申し訳ございません……頑張って書き続けますね……! (2023年4月5日 17時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2022年9月12日 21時