となりのデスクのキムくん 2

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その日から数日間、業務を終えてから私たちだけで残って社員旅行について話し合うことが増えた。ミンギュは本当に真剣で、毎日帰った後に色々と旅行プランを調べて印刷してきてくれたりする。

それを見ながら、

「ミンギュって、修学旅行も張り切ってたタイプだ」

と言うと、んふふと笑われた。

「Aは希望してもないのに学級委員にさせられてたタイプでしょ？」

当たってる。顔を上げると、体勢を崩したミンギュが笑っていた。

何だか、この空間が暖かくて。口を開く。

「………この前美術館に行った帰り道でミンギュが言ってた『酔ってない時に言う』っていうの、あれって結局何だったの？」

「…シンさんははっきりものを言うんだから……」

ミンギュが姿勢を戻して、咳払いをする。なんだか少し緊張した。

「やっぱり教えない」

「なんで」

「仕事中だから」

…仕事中の人の体勢ではないですが。確かに一応仕事中だけど。

そこからは我に返って、企画書を進めた。要領の良いミンギュのおかげで、だいたい纏まってきた。

今日はもう夜も更けてきたし帰ろう、とお互いに意見が一致した。

手早く勤怠を切って、印刷された企画書を取りに行く。明日経理部に見てもらわないと。

「…この前さ、Aが言ってくれた言葉あるでしょ？上手くいく恋愛もこの世にはあるって話」

「え？…あぁ、したね」

コピー機から出された書類を手に取りながら、頷いた。

ミンギュが立ち上がり、こちらにやって来る。

「もし、そんな恋愛をするなら、俺はAとしたい」

するりと、ひらりと、私の手元にあった紙が床に落ちた。

ミンギュが微笑んで、私の落とした企画書を拾った。

「ちょ、ちょっと待って」

「待たない。ほら、俺達もう仕事終わったじゃん」

え、さっきの『仕事中だから』って本気だったの？

「ていうか俺、散々思わせぶりなこと言ってきたし、今更でしょ」

それは確かに…そうだけれど。急にそんなこと言われても、気持ちが追いつかない。

ミンギュが本当に私をそういう気持ちで、あの時抱きしめてたのか、とか。『特別』とか『大切』とか、あの言葉が本気だったなんて。



それにこんなに、まっすぐ言われるとは思っていなかった。



「俺、こんなふうに言ってるけどさ、今多分Aよりドキドキしてるし…緊張してるから」

「…うん」

ミンギュが困ったように笑って、私の方に近付いた。彼のバニラの香水が、私の心を甘く香りづけていく。

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