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ミンギュside
傘を持ってきてくれるという電話を終えたあと、ウォヌヒョンと目が合った。
「さっき言ってた彼女?」
「そうです。うわ、この雨の中大丈夫かな」
やっぱり傘借りればよかった。こんな雨じゃAの方が濡れちゃうじゃん…
「俺ちょっと迎えに、」
「それじゃわざわざ来てくれる意味ないだろ」
ウォヌヒョンの言葉にぐうの音も出ない。大人しくソファーに座った。
「ミンギュらしくないな」
「そうなんですよ!Aのことになると心配性で我儘で…全然カッコつけられないし」
僅かに聞こえてくる雨音に、俺のため息が溶けていく。
「それでもいいじゃん」
ウォヌヒョンの言葉に小さく頷く。心配性なのも、世話焼きなのも、我儘なのも、全部俺だから。
着飾ることなく、隣にいられるのは、Aだから。
「…今だから言えるけど、ミンギュに感謝してる。あの時図書館であの子のこと、紹介してくれなかったら今こんな関係にはなれてないから」
お前のそういうところに感謝してる、なんてヒョンこそらしくない事を言ってくる。
「多分、俺が紹介してなくても2人は仲良くなってましたよ。ヒョンはずっと好きだったんだし」
「そうとも限らないだろ」
確かに、仮説を立てればキリがない。そう考えると、なんだか不思議な気持ちになった。
「彼女、そろそろ着くんじゃない?」
壁にかけてある時計を見て、慌てて立ち上がった。財布を手に、玄関へと向かう。キムさんにもよろしく、と伝えると『会いたがってたよ』と教えてくれた。
エレベーターで1階まで下がって、彼女を待つ。毎日あってる癖に、Aと会う時はどんな時だってワクワクする。
無理言ったから流石に怒られるかな。傘もってなかったことも怒られるかも。
いつもは不快に思う土砂降りの雨も、そこまで気分が沈まない。そろそろ着く?と連絡を入れるためにスマホを見ていると、自動ドアの開く音がした。
「お待たせ」
案の定彼女の足元はずぶ濡れで、肩もカバンも濡れている。
怒っている様子ではなく、俺の方をじっと見つめるAの瞳は俺と同じように会える期待を含んでいるように見えた。
狡い俺は、そんなAのことが酷く愛おしく思える。
今日は相合傘じゃなくて、2人別々の傘の方が良さそう。彼女からビニール傘を受け取って、「ありがとー」と伝える。
本当はカフェに行く予定だったけど、すぐ家に帰って温かいお風呂を沸かさなきゃ。僅かに触れた指先が冷たかったから。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(;;)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…!本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます!次作も頑張ります! (2021年10月16日 21時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした!繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました!ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます! (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました!そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(;;)次回作も頑張ります! (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります! (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 | 作成日時:2021年8月30日 7時