となりのデスクのキムくん 2

91 ページ42

ミンギュside

最近は忙しくて、ウォヌヒョン達の家に遊びに行く機会が無かった。

Aと付き合ってからは初めて遊びに来たヒョンの家は相変わらずオシャレで、ヒョンとヒョンの恋人であり、俺の大学の頃の友人であるキムさんの趣味が絶妙にマッチしている。

今日は彼女は仕事だとヒョンが教えてくれた。キッチンカウンターに飾ってある海の写真は最近のものかな？俺が前来た時はなかった気がする。

「…この写真、今年撮ったやつですか？」

キッチンの中でお菓子を探っているヒョンの背中に聞くと、「いや、久しぶりに俺のカメラのデータを現像したらあったから飾った」と振り向かずに教えてくれる。

お目当てのスナック菓子を見つけたヒョンがようやくこちらを向く。

「この写真は1年前の俺の誕生日に撮ったやつ。いやー、まさかこの丁度1年後にプロポーズすることになるなんてな」

ははっと笑いながらヒョンがスナック菓子の袋を開けた。

…え、今なんて言ったこの人。

「ウォヌヒョン、今なんか言いました？」

「ん？言ってなかったっけ？再来月に入籍するって」

全然、まったく、なんにも聞いてませんけど。

俺は飲もうとしていたコーヒーを机に置いて、乾いた笑いをした。

「ヒョン、そういう事は会った時すぐ教えてくださいよ…てか、メッセージでも何でも教えてよ！？」

あまりにもパニックで敬語が外れてしまう。ウォヌヒョンは愉快そうに笑って、お菓子を手に椅子に腰かける。

「悪い、プロポーズした時初めて結構大きめの喧嘩してさ。ようやくちゃんと答えもらったのが先週」

2人が喧嘩するなんて想像も出来なくて、黙ってしまう。

キムさんもウォヌヒョンも思慮深いからこそ、考え過ぎてすれ違ってしまったと教えてくれた。

結構心労もあったろうに、ヒョンは今なんでもない顔でコーヒーを飲んでいる。

「人間と人間だから、当然合わない部分があって、それを妥協出来るかどうかだと思うんだよ。結婚って」

「…」

「人の気持ちはコントロール出来ないから、許せないと思ったらもうダメなんだと思う」

幸せの絶頂は誰かに恋をし始めた時なんだって、俺は今まで思っていた。付き合ったら、喧嘩をしたり、相手を優先してばかりだと疲れるし。

俺はただその先の幸せを知らなかっただけなんだと、ヒョンの横顔を見て思った。

だって今日のヒョンが、1番幸せそうに見える。

そんなことを考えていたら、俺が頭に浮かべていた人から電話が来た。

92→←90

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す