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「大変お待たせしました〜、ラーメンですよ〜」
ミンギュが忙しなくこちらにやって来る。客用のスリッパがパタパタと音を立てているのが可愛かった。
木のトレイに用意されたラーメンは、半熟のゆで卵とノリとハムと散らしネギまで乗っていて驚いた。美味しそう…
「ありがとう」
「いいえ〜」
彼は少年のように無邪気に笑った。早く食べよう、と2人で手を合わせる。ミンギュはようやく有りつけた夕飯を物凄いスピードで食べていた。
同じはずのラーメンが別の商品のように美味しい。感動して顔を上げると、ミンギュが「美味しいでしょ？」と首を傾げてきた。
「美味しい」
素直に答えると、目を細めたミンギュ。
「A」
「ん？」
半熟の黄身が溶けてスープに馴染んでいく。これぐらいの半熟具合が1番好き。麺と絡ませると絶品だ。
「俺、ラーメン食べてるだけなのに今めちゃくちゃ幸せ」
そう言って、口いっぱいにラーメンを食べる。熱かったみたいで、慌てて水を流し込んでいる。
本当、騒がしい人だ。スープも机に飛び散っちゃっている。
「私も」
ぼそりと呟いてラーメンを啜った。もぐもぐと食べているミンギュがこちらを見つめている。
まるで、ミンギュの瞳には私しか映ってないと伝えてくれるように。
ふふっと微笑んだ彼が、口を開いた。
「今度は泣かないで欲しいんだけど、いけそう？」
「ん〜…どうかな」
だってもう既に私の胸はいっぱいで、ラーメンの味も段々としなくなってきた。ミンギュの器にはラーメンはもう無くて、食べるの早いな、なんて別のことに意識を向ける。
「言わない方がいい？」
彼の言葉に手が止まった。そうじゃない、ただ泣かない自信が無いだけ。
慌てて顔を上げれば、ミンギュはいたずらっ子のように笑って立ち上がった。私の横にやってきて、手を握ってくる。
その場でしゃがんだミンギュは、私を見上げる形になった。
「言わない方がいい？っていうのはそういう意味じゃないから」
握られた手のひらが、私のことを軽く引っ張った。
近づいたミンギュの顔に驚いて何の反応も出来なかった。重ねられると思っていた唇は、僅かにそこを掠めて唇の横にキスされる。
「ほら、言わなくても伝えられるでしょ」
この一瞬に、ミンギュの優しさが全部詰まっているように感じた。
立ち上がったミンギュに釣られるように、椅子から立ち上がる。
軽く背伸びをすると、腰に回された大きな手のひら。
私はそのまま、彼の首に腕を回した。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
