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ミンギュが私の傷を見て、まるで自分の傷のように顔を歪ませた。
「ほんとに大丈夫だから。ミンギュは戻って」
「うるさいなぁ。こんな時ぐらい黙ってて」
まさかそんな風に返されるとは思わず、立ち上がって何処かに行ってしまったミンギュの背中を見つめる。
すぐに帰ってきた彼の左手には、救急セット。そこまでしなくてもいいのに。
「ちょっと右側寄って」
と言われて、空いたスペースにミンギュが軽く腰掛ける。たまに何故かミンギュの方が痛そうな顔をしながらも、要領よく消毒してガーゼを止めるテープを巻いてくれた。
黙って救急セットをしまっている彼の後頭部に呟く。
「…お昼は、ごめん」
私の声が届いたであろう彼は、黙ったまま救急セットの蓋を閉じた。
「何が？」
さっきは痛くてそれどころじゃなかったけれど、今になると1つのシートに2人で座っているせいか、彼との距離が近く感じた。
もう社用車は戻ってきているし、ついさっき定時の時間を過ぎたからこの駐車場に訪れる人はいないだろう。
「ミンギュの質問に答えられなかったから。」
「あぁ、そんなこと？」
別に気にしてないよと返してくれる。
靴擦れがこれ以上酷くならないように丁寧に治療してくれた左足首を見つめながら頷いた。
「それよりこんな高いパンプスで走ったらダメだよ？ただでさえ俺が外回りから戻ってきてもまだ帰ってきてないのに心配してたんだから…」
彼も同じように、私の左足首を見つめる。
「オフィス戻れる？もしキツかったら俺から課長に直帰したって伝えるけど」
「ううん、大丈夫…ありがとう」
ミンギュの方を見上げると、優しい瞳と目が合った。私の横髪を耳にかける。
行こうか、と呟いた彼の左腕を掴んでしまった。
「ミンギュのこと、好きだよ」
車を出ようとしていた彼はもう外を向いていて、顔が見えない。
本当は、あの日から好きだった。ミンギュと桜の木を見たあの日から。
彼をずっとずっと好きなのは、私の方だ。
世界がゆっくりと時間が流れていくような感覚になった。ミンギュがようやくこちらを振り返る。薄暗いせいですぐには表情が見えなかった。
ミンギュの大きな体が私にのしかかってくる。長い腕が私を逃さないようにぎゅっと背中に回って、遠慮なんてないかのように抱きしめられる。
けれど、それは想いを伝える為で。本来なら潰れるぐらい重たいはずの体重がかからないようにしてくれる彼の優しさに甘えるように、そっと背中を摩った。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
