となりのデスクのキムくん 2

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そんな風に始まった7月。仕事が始まると慌ただしい日々が続いた。気付けば今日は水曜日。

出社してすぐ要件があったホン先輩が見当たらない。まだ来てないのかな？と思いつつ、提出する書類のファイルを開く。

誰かが、私の肩を叩いた。私はホン先輩だと思い振り返る。

「おはよう」

その声はホン先輩よりも低くて、私の知っている声だった。

コーヒーを飲んでいた隣のミンギュも私の様子を見て、彼のことを見上げる。

「…おはようございます」

相変わらず優しい彼の笑みに、視線が定まらない。そんな私を見て、「体調は？」と聞いてきた。

「問題ないです」

「そっか。ならよかった」

私たちの間に流れる微妙な空気にミンギュが不思議な顔をしていると、ホン先輩が戻ってくる。

「スンチョラ」

久しぶりに聞いた彼の名前に何だか落ち着かなかった。こちらにやって来たホン先輩が、私とスンチョルさんを見て何かを察したような表情へと変わった。

「ごめん。邪魔した？」

「いや、全然。それよりちょっとだけシンさんと面談したいんだけど」

「…公私混同には反対だな」

「違うわ！部長から頼まれたんだよ。異動してきて3ヶ月経つから様子見てこいって」

スンチョルさんとホン先輩が何か楽しそうに話しているのを見ていると、隣のミンギュがこちらへやってくる。

「…あの先輩誰？」

「人事部のスンチョル先輩」

納得したような、してないようなミンギュがカップに口をつける。

ホン先輩との話し合いが終わったらしいスンチョルさんが私の方を見た。

「…A、忙しいとこ悪いけど少しだけ面談させてもらっていい？」

人事部は面談までして大変だなと思いつつも頷くと彼が安心した様子で笑った。

「2階の面接室でやろうか」

「承知しました」

スンチョルさんの顔をこうやってきちんと見たのは、いつぶりだろう。彼の後ろを歩いて、そんなことを考えていた。

「本当に元気だった？」

エレベーターが混雑していたので階段を2人で下っていると、スンチョルさんの声が聞こえた。

彼は振り返らずにそう聞いてくる。

「…オッパは？」

そう返すと、スンチョルさんの足が止まった。ん〜、と少し考えた後に答えをくれる。

「俺は少し、寂しかったかな」

そしてまた階段を下り始めたスンチョルさん。

彼の表情を見ることは出来なかった。

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