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荷物を纏めて、出口を出ると、ネイビーのパーカーを着たウォヌさんが立っていた。

「お、ウォヌだ〜バイトお疲れ〜」

「先輩、こんばんは」

彼はそっとジュン先輩と私の間に入って、彼らと軽く話を済ませる。

「じゃあ、Aちゃんまたね〜」

「はい、また学校で〜」

ミンハオくんにも手を振って、彼らを見送る。ウォヌさんも2人に手を振ると、すぐにこちらを向いた。

「…帰るか」

「バイト、お疲れ様でした。ロングで疲れて、」

いつもの癖で『先に帰っていただいて大丈夫ですよ』と言いそうになるのを慌てて口を閉じる。

すると、ウォヌさんが軽く微笑んで私の手を取った。

「Aちゃんも、お疲れ」

ようやく見ることのできたウォヌさんの笑顔に、少し気持ちが軽くなる。

「…ジュナとミョンホと、楽しかった?」

「はい!あ、そうだ、ヘソン先輩がアメリカに行っちゃうって聞きました?」

「うん、さっき本人から聞いた」

…ヘソン先輩、ウォヌさんのところに行ったんだ。ちょっとだけ不安な気持ちが過ぎると、ウォヌさんが口を開く。

「………誰かに、出会って変わっていくなら、俺はAちゃんに出会って、変わったんだと思う」

「え?」

「いや、ちょっとした考え事の結論?」

何だかよく分からないけど、頷く。

「でもそれなら、私もウォヌさんに出会って変わりましたよ」

「そう?」

「コーヒーを好きになって、誰かといる時間が好きになって、…」

一つ一つ、あげていく度に満足気に変わっていくウォヌさんの表情。


「それから、」

「うん」

「ウォヌくんのことを、好きになったよ」

彼の足が、止まった。

信じられないものを聞いたかのように、こちらを見つめてくる。

これが、愛情なのかは分からないけど。

「色んなものを、好きになったんだよ」

まだ、ちょっとぎこちない口調に、動揺しているのは私はだけでは無いはず。

「A、」

ウォヌさんが小さな声で私の名前を呼んだ。

「もう1回、俺の名前呼んで」

繋いだ手のひらが、僅かにさっきよりも温かく感じる。

「…ウォヌくん」

何故か潤んで見えたウォヌくんの瞳は、気のせいなのか、分からない。分からないけれど、もう一度彼の名前を呼ぶ。

「ウォヌくん?」

すると彼は、嬉しそうな笑顔を見せた後に、そっと私の頬に手を添えた。

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夏目(プロフ) - ハナさん» ハナさん、最後までコメントありがとうございます!ハナさんのコメントが更新の支えになっておりました!私も2人のお話を楽しく書かせて頂いていたので、寂しい気持ちです……いつも素敵なコメント、励まされるコメントをありがとうございました! (2021年7月21日 13時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん!完結おめでとうございます!初めから終わりまで2人の間に流れる雰囲気と、流れる時間がとっても素敵で本当に大好きなお話でした!大好きすぎて完結が少し寂しく感じる程ですが、最後まで素敵なウォヌくんを書いてくださった夏目さんに本当に感謝しています^ ^ (2021年7月20日 13時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - naokiさん» naokiさん、長い間お付き合いいただきありがとうございました!今回の作品も愛情を持って読んでいただけてとても嬉しいです。素敵なコメントと応援ありがとうございます。更新の支えになります!これからも頑張ります!! (2021年7月18日 17時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
naoki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ゆったりと流れる二人の穏やかなお話はとても素敵で、大好きな作品です。誕生日での完結も相まって、夏目さんの作品とウォヌさんへの敬意や愛が伝わります。更新お疲れさまでした。大好きです!これからも応援してます。 (2021年7月17日 22時) (レス) id: c546018bd1 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - kaiさん» kaiさん、コメントしてくださりありがとうございます。私もいつも完結はとても寂しい気持ちになります…2人の空気感を大切に書いたので、そう言っていただけてとても嬉しいです!私もどこかでまた、2人のお話を書きたいと思っております!本当にありがとうございます。 (2021年7月17日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏目 | 作成日時:2021年3月4日 0時

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