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お店を出て、名残惜しさを感じながらも電車に乗って、あっという間に最寄り駅。
いつもよりも、ゆっくりと家に向かった。
「ウォヌさん」
「ん？」
「私も、ウォヌさんといると日頃忘れてしまう有難みとか、幸せに気づけるんです」
丁度いい夜風が頬を撫でる。ウォヌさんの表情は、街灯の光が眩しくて上手く見ることが出来なかった。
彼が私の頭にそっと手のひらをのせる。
「A、抱きしめていい？」
彼の声は、夜に溶け込んでしまいそうで。聞いてきたのに、私の答えを待たずに身体を屈めて抱きしめてくる。
ていうか今、ウォヌさん私のこと、
「………好きだよ」
耳元で言われれば、もう何も考えられない。ウォヌさんの腕の中に大人しくおさまることしか出来なかった。
ウォヌさんの大きな身体を受け止めながら、ふと思い出す。
「あ、そうだ」
私がそう言って離れると不満そうなウォヌさん。だってもう家はすぐそこなのに、今日渡すべきものを忘れてしまうところだったから。
茶色の革のカバンを開けて、包装紙にくるまれたプレゼントを取り出す。
すると、ウォヌさんの表情がピタリと固まった。
「お誕生日プレゼントです」
「……え、」
ウォヌさんは驚きながらも受け取ってくれた。ぽかんとした表情のまま、「開けてもいい？」と聞かれる。
「大したものは用意できなかったんですけど…」
私が頷くと、彼は包装紙を取って中身を取り出す。
「ブックカバーだ」
「そうです。栞用の紐付きのやつ、欲しいって仰ってたので」
紺色のシンプルなデザインのものに、金色の紐がついたブックカバー。ウォヌさんは分厚い本を読んでいることもあるので、大きめのカバーにした。
嬉しそうにそれを眺める彼。中に入っているメッセージカードを見つけて微笑んでくれた。
可愛らしいキツネのイラストが描いてあるメッセージカードに、くしゃりと笑う彼。
どう書くべきか悩んで、『お誕生日おめでとうございます。いつもありがとうございます』……なんて真面目なことしか書けなかった。
今日、こんなことになるなんて予想もしてなかったから。
「ありがとう。このプレゼントも、今日のことも、」
大切にする。
ウォヌさんは、ブックカバーを大切そうに抱きしめて、私に言ってくれた。
ゆっくりと近付いてくるウォヌさんの顔に、慌てながらも目を閉じる。
けれど、おでこに感じた、唇の感触。
そっと目を開けると、頭を撫でられた。
「おやすみ」
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夏目(プロフ) - ハナさん» ハナさん、最後までコメントありがとうございます！ハナさんのコメントが更新の支えになっておりました！私も2人のお話を楽しく書かせて頂いていたので、寂しい気持ちです……いつも素敵なコメント、励まされるコメントをありがとうございました！ (2021年7月21日 13時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん！完結おめでとうございます！初めから終わりまで2人の間に流れる雰囲気と、流れる時間がとっても素敵で本当に大好きなお話でした！大好きすぎて完結が少し寂しく感じる程ですが、最後まで素敵なウォヌくんを書いてくださった夏目さんに本当に感謝しています^ ^ (2021年7月20日 13時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - naokiさん» naokiさん、長い間お付き合いいただきありがとうございました！今回の作品も愛情を持って読んでいただけてとても嬉しいです。素敵なコメントと応援ありがとうございます。更新の支えになります！これからも頑張ります！！ (2021年7月18日 17時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
naoki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ゆったりと流れる二人の穏やかなお話はとても素敵で、大好きな作品です。誕生日での完結も相まって、夏目さんの作品とウォヌさんへの敬意や愛が伝わります。更新お疲れさまでした。大好きです！これからも応援してます。 (2021年7月17日 22時) (レス) id: c546018bd1 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - kaiさん» kaiさん、コメントしてくださりありがとうございます。私もいつも完結はとても寂しい気持ちになります…2人の空気感を大切に書いたので、そう言っていただけてとても嬉しいです！私もどこかでまた、2人のお話を書きたいと思っております！本当にありがとうございます。 (2021年7月17日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年3月4日 0時
