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「…悪い、友達と見たかったよな」
暫く歩いた後にウォヌさんが呟いた。予想していなかった言葉に彼の方を見ると、柔らかい風にウォヌさんの黒い髪が揺れていた。
「全然そんな、私はウォヌさんとも見たかったです」
そう返すと、ウォヌさんが嬉しそうに口元を緩めて蓋の空いたエナジードリンクの中を見つめている。
手が触れそうで触れない、届きそうで届かない彼との距離はまるで心の距離のように感じた。
「なんか、可愛いな。そういうとこ」
心の奥が擽ったくて、ウォヌさんの言葉に含まれる意図が知りたいのに。そこまでは教えてくれない彼のことをもっともっと、考えてしまう。
私が暫く黙っていると、「まだ時間あるし昼飯先買いに行く?」と聞いてくれる。
「そうですね、混む前に行っておきたいです」
「ん。コンビニでいい?俺も買っておきたい」
私が頷くと、ウォヌさんは進行方向をゆっくりと変えた。そういえば彼と歩いていて疲れたことがない。
「おにぎりの具で何が好きですか?」
何となく聞いてみると、ウォヌさんが少し考え込んでいる。そんな真剣に考えてくれてるの…?と思っていると、こちらを見たウォヌさん。
「鮭以外ならなんでも食べるかな」
鮭苦手なんだ…また新たな彼の一面を知ることができた。
コンビニに到着するといつも以上に人が少なかった。私はメロンパンにすることにした。新作の焼きプリンを見つけてそっとカゴに入れると、隣にいたウォヌさんに笑われてしまう。
ちょっとだけ恥ずかしいかも…
「後はいい?」
頷いてレジに行くと、財布を出す暇もなく纏めてお会計を済ませてしまった彼。黒い袋を持って出口に向かってしまう。
なんだかいつも払ってもらってしまっているような…
「今日は出します!」
と言ったのに彼は受け取ってくれない。
「こういう時は『ありがとうございます』でいいよ」
なんて言われてしまって。
「……すみません、ありがとうございます」
渋々言うと、「ん、素直でいい子」と返された。
第2体育館に着くと結構な数の人が既に座っていた。ほとんど席は埋まっていたけれど、ウォヌさんが丁度空いているところを見つけてくれた。
私が座ると、ウォヌさんがこちらに少しだけ顔を寄せて話してくれる。多分、周りがガヤガヤしているから聞こえるようにしてくれているだけなんだろうけど、少しドキドキする。
「俺、ジュナのダンス見るの好きだから楽しみ」
…キツネさん、可愛すぎます。
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奈々ごん(プロフ) - 初めまして!久しぶりにきゅんきゅんする小説に出会いました。ありがとうございます!口角が上がってしまうくらい好きな小説です! (6月13日 13時) (レス) @page50 id: dda75e19fb (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - KYANAさん» 初めまして!楽しんでいただけて嬉しいです!応援ありがとうございます!励みにして頑張りますね! (2021年2月9日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
KYANA(プロフ) - はじめまして!最近見つけて読ませていただいているのですが、本当に最高です…!更新応援しています!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 6aecb490a8 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - ハナさん» 感想をいただけると本当にモチベーションが上がるのでそう言っていただけて光栄です(;_;)!!ありがとうございます…!私もハナさんのこと大好きです!!! (2021年1月29日 11時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん» 素敵すぎてついつい感想を伝えたくなってしまって…!私こそ夏目さんのお話に癒しをもらってます!大好きです!!!(ただの告白) (2021年1月28日 23時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 | 作成日時:2021年1月15日 17時