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それから数日、コントルに行ってもウォヌさんのシフトと合わないみたいで中々会うことが出来ない。
ここの店長さんがいれてくれるコーヒーは格別に美味しいけれど、少し物足りない何かを感じてしまう。
今朝も学校に行く前にコーヒーとサンドイッチを食べて、本を読んで。いつも通りに学校に向かう。
午前中はユアやミンギュくん達と授業を受けて、午後はチェ教授のゼミの面接がある。面接の練習をする為に図書館へと向かった。
お昼時だったせいか、図書館の共用スペースはほとんど埋まってしまっている。3階の隅にある自習スペースなら空いているかな、と階段を上がることにした。
3階の自習スペースは、本棚に隠れていて知ってる人も少ない。穴場スポットだと思う。テスト期間でも埋まらない、普段は誰もいないスペース。
………だと、思っていたのに。
誰かが机に伏せて眠っている後ろ姿が見える。
窓に面した席でぐっすりと眠る背中は、見覚えがある。
近付いてみると、やっぱりウォヌさんだ。僅かに寝息が聞こえる。
何だか、彼の周りはゆっくりと時間が進んでいるみたいだ。
もうすぐ、チェ教授のゼミの授業が始まる時間だけどいいのかな……10分経ったら起きるのかな。
なんて思いながら彼の寝顔を見守っていると、僅かに瞼が開いた。
「んん…」
「すみません、起こしましたか?」
小さな声で謝る。ウォヌさんは眠たそうに目を擦って、スマホを付けた。授業が始まる時間だけど、彼が焦る様子はない。
「………まだこんな時間か」
と、一言だけ。
「あの、お昼寝の邪魔してごめんなさい」
申し訳なくてそう呟いて別の場所へと移動しようとしたのに、出来なかった。
ウォヌさんの、大きな手のひらが私の手首を優しく掴んでいて。
掴まれた手首からじんわりと、熱が上がっていくようだった。
「……そうやって逃げるけど、俺と話すのしんどい?」
彼の一言に、目を見開く。ウォヌさんの方を見ると、意外にも余裕そうな笑みを浮かべていた。なんと言うか、ずるい笑顔。
「そんなこと、思ったことないです。本当に」
寧ろ、もっと話してみたいことはたくさんある。
手首を掴んでいた彼の手のひらが、するりと私の手のひらに回った。
それを僅かに握り返す。初めて触れるウォヌさんの手のひらは、思った以上に大きくて骨ばっていた。
「ん。なら良かった」
私の手のひらをぎゅっと握ったウォヌさんは嬉しそうに笑っていて。
彼は繋がれた手のひらを見つめていた。
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奈々ごん(プロフ) - 初めまして!久しぶりにきゅんきゅんする小説に出会いました。ありがとうございます!口角が上がってしまうくらい好きな小説です! (6月13日 13時) (レス) @page50 id: dda75e19fb (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - KYANAさん» 初めまして!楽しんでいただけて嬉しいです!応援ありがとうございます!励みにして頑張りますね! (2021年2月9日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
KYANA(プロフ) - はじめまして!最近見つけて読ませていただいているのですが、本当に最高です…!更新応援しています!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 6aecb490a8 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - ハナさん» 感想をいただけると本当にモチベーションが上がるのでそう言っていただけて光栄です(;_;)!!ありがとうございます…!私もハナさんのこと大好きです!!! (2021年1月29日 11時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん» 素敵すぎてついつい感想を伝えたくなってしまって…!私こそ夏目さんのお話に癒しをもらってます!大好きです!!!(ただの告白) (2021年1月28日 23時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 | 作成日時:2021年1月15日 17時