18 ページ18
ウォヌさんが帰っていく背中を見つめていると、裏から店長がやって来た。
「ね、さっきの彼氏?」
新婚ホヤホヤの女性店長がニヤニヤしながら聞いてくる。
「彼氏……いや、まさか、違いますよ」
思いもよらないワードにちょっとだけ動揺してしまった。そんな恐れ多いこと考えたこともなかった…
「そっかぁ、もうAちゃんを見つめる視線が違ったと思うんだけどな」
なんて、ありえない事を言われるのでもう一度否定しておく。
ただの大学の先輩で、最近ようやく話すようになったぐらいだし。
まさか、そんな彼氏だなんて…………そんな。
さっきのウォヌさんとの会話を思い出して、何故か恥ずかしくなってしまう。
「彼氏かどうかは置いておいても、素敵な雰囲気の人だね」
ウォヌさんとジュニ先輩が居なくなってしまった扉の外を見つめながら店長が呟いた。
「はい」
私が頷くと、再びにやけ始めた店長。
「やっぱりちょっとは気になってるでしょ?」
ちょっと、というか、
「………はい」
私が頷いたのを見て、嬉しそうに裏に戻っていく店長。
相変わらず楽しい人だなあ、と思いながらケーキの陳列を直すことにした。
それから数時間、いつも通り仕事をして家に帰る。社割で買ってきたプリンタルトを食べる、ちょっとした贅沢な時間。
プリンタルトを食べ終わったら、読み途中の小説を読む。もう少ししたらスーパーで買い物しないと。
ページを捲っていると、差し込んできた西日が眩しくてカーテンを閉める。けれど、ふわっと風が入り込んできてカーテンが大きく揺れた。
こういうのんびりとした時間が、心地良い。
カーテンから見える外の風景は、いつもと何も変わらない平和なものだった。
今日の夕飯は、魚の煮付けにしようかな。
スーパーで魚が安くなっているのを祈って、エコバッグと財布をお気に入りの革のカバンに入れた。
家を出て、全然掃除されていない階段を下りていく。タンタン、と音が響いた。
『やっぱりちょっとは気になってるでしょ?』
ちょっと、というか。
………かなり、気になってしまっています。
でも相手は1個年上の優しいイケメンカフェ店員。
全く釣り合わない自分と比べて、何故か少し凹んでしまった。
「………変なこと考えるのはやめよう」
1405人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奈々ごん(プロフ) - 初めまして!久しぶりにきゅんきゅんする小説に出会いました。ありがとうございます!口角が上がってしまうくらい好きな小説です! (6月13日 13時) (レス) @page50 id: dda75e19fb (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - KYANAさん» 初めまして!楽しんでいただけて嬉しいです!応援ありがとうございます!励みにして頑張りますね! (2021年2月9日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
KYANA(プロフ) - はじめまして!最近見つけて読ませていただいているのですが、本当に最高です…!更新応援しています!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 6aecb490a8 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - ハナさん» 感想をいただけると本当にモチベーションが上がるのでそう言っていただけて光栄です(;_;)!!ありがとうございます…!私もハナさんのこと大好きです!!! (2021年1月29日 11時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん» 素敵すぎてついつい感想を伝えたくなってしまって…!私こそ夏目さんのお話に癒しをもらってます!大好きです!!!(ただの告白) (2021年1月28日 23時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏目 | 作成日時:2021年1月15日 17時