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ウォヌside
大学の友達であるジュニが土曜の午前中に突然家にやってきた。
「何?辛いもん食いに行く?」
とまだスウェットのまま玄関で聞くと、今日は甘いものが食べたいと言い出すからこいつのことがまだ理解しきれない。
まあ、暇なので部屋にあったTシャツとジーンズを履いて外に出ることにした。
近所にあるケーキ屋は存在だけ知っていたが、入ったことは無かった。男2人でケーキ屋に入るのは気が引けたが、ジュニは遠慮なく扉を開ける。
「いらっしゃいませ、」
そこにはAさんがいて、一瞬目を疑った。こいつといるとたまにこういう思いもしない幸運が訪れるのは何なんだろう。
本当に偶然なんだが。
「こんにちは」
と戸惑いながらも俺に挨拶をしてくれる彼女。ケーキ屋の制服がよく似合ってる…という言葉は飲み込んだ。
彼女がいつもとは違ってキラキラとした笑顔でオススメしてきたプリンタルトは、俺にとっては少し甘かった。
数席しかないイートインスペースを俺たちが使うのは少し気が引けたけど、このまま帰ったら…ジュニとAさんが仲良くなっただけで終わる。
呑気に目の前でチョコケーキを食べるジュニが「ん〜これこれ」と上機嫌だからまあいいか。
Aさんは笑顔で接客していて、いつもの落ち着いた様子とは違う雰囲気だ。
「ミョンホがたまに話題に出す子ってあの子のことか」
プリンタルトを食べる手を止める。
そんな俺の様子を見て、ジュニが珍しいものでも見たかのような反応をしてきた。
「ウォヌって女の子に興味あるんだ」
「あるだろ」
ミンギュと言いジュニと言い、なんだと思われてるんだ。
そしてジュニは暫く考えた後に、何かを思いついたように口を開いた。
「あ、Aちゃんのこと好きなの?」
あまりにもストレートな質問に、プリンタルトと一緒に頼んだコーヒーを吹き出しそうになってしまう。
「大丈夫?」
「お前………」
何とかコーヒーを机に置いて、またプリンタルトをフォークで1口大にして口に入れる。
やはりこのケーキは、甘い。
彼女の方をもう一度見ると、目が合った。少し頬を赤らめて笑顔を見せてくれる。
「好きだよ」
「え」
俺はそんな彼女を見つめながら、小さく呟いた。
春の昼間が眠たくなるように、
ジュニの言動が未だに理解できないように。
俺は当たり前に、そう答えた。
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奈々ごん(プロフ) - 初めまして!久しぶりにきゅんきゅんする小説に出会いました。ありがとうございます!口角が上がってしまうくらい好きな小説です! (6月13日 13時) (レス) @page50 id: dda75e19fb (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - KYANAさん» 初めまして!楽しんでいただけて嬉しいです!応援ありがとうございます!励みにして頑張りますね! (2021年2月9日 18時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
KYANA(プロフ) - はじめまして!最近見つけて読ませていただいているのですが、本当に最高です…!更新応援しています!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 6aecb490a8 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - ハナさん» 感想をいただけると本当にモチベーションが上がるのでそう言っていただけて光栄です(;_;)!!ありがとうございます…!私もハナさんのこと大好きです!!! (2021年1月29日 11時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 夏目さん» 素敵すぎてついつい感想を伝えたくなってしまって…!私こそ夏目さんのお話に癒しをもらってます!大好きです!!!(ただの告白) (2021年1月28日 23時) (レス) id: aea125837e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 | 作成日時:2021年1月15日 17時