『Secret_Vol.18』 ページ19
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｢･･･あの、どうしたん、ですか｣
たったこれだけなのに声が上ずりそうになり、言い終えて直ぐに口を噤んでお茶を飲む。
大学生の一人暮らしのアパート。
もちろんそんなに綺麗でもなく広くもない。
そんな場所に今、俺は愛する人と2人きりだ。
しかも、よりにもよって彫刻のような綺麗な顔立ちをしていて、
話すと意外とふわふわしてて、
あっという間に俺の心をさらっていった、
夏希という息子のいる藤井さんと、2人。
俺が踏み出せなかった理由には、母親以外にもうひとつあった。
藤井さんが1度結婚して、子供を持った事実があること。
奥さんがいた事実があること。
それはつまり、恋愛対象が女の人であることを表している。
普通の人から見たら当たり前の事実を述べただけ。
でも、俺にはそれが【普通】ではない。
俺の恋愛対象は、同性だから。
今まさしく目の前にいる、この人だから。
だから本当は、もっと先に行きたくて。
なんて悶々としていたところで、ようやく藤井さんが俺の問いに答えた。
｢衝動的に動いてもうたから、自分でもまだ色々まとまってないねんけど｣
｢･･･はい｣
｢単刀直入に言おうと思って｣
自惚れかもしれない。
けれどその口から今出ようとしている言葉は、俺が期待してもいいものだと何となく感じてしまった。
彼のその目に、その姿に、表れている。
その目を見た時、分かった。
俺は大きな勘違いをしていたかもしれない。
いや、分かってはいたがそれを言語化するのを諦めていたのかもしれない、と。
｢･･･俺は、神山智洋という1人の男を、心の底から愛してるんやと思う｣
奥さんがいたことは確かに事実。
だが、それはあくまで過去である。
彼は、自分の本当の気持ちに気付いてやり直そうとしたのではないか。
このまま【普通】に囚われたまま奥さんといると彼女を傷つけかねないと悟って、区切りをつけたのではないか。
ただの思い込みや妄想だと思って考えないようにしていた事たち。
しかし今、彼の思いを聞いて、ほぼ確信に変わった。
彼の目に映る愛する人もまた、男であることに。
お互いの【普通】が、俺たちの中で確実なものとされてしまったことに。
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岡本まどか(プロフ) - にらさん» コメントありがとうございます！出会えてよかったとまで言って貰えるなんて･･･恐縮です笑 これからもよろしくお願いいたします^^* (2021年2月12日 17時) (
レス) id: 36ad40152b (このIDを非表示/違反報告)
にら - えっ、好きすぎるんですけど？世界観最高すぎやしません？？ほんまにこの作品に出会えてよかったですわ笑更新頑張ってくださいっ！ (2021年2月11日 22時) (レス) id: 34a7964571 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：岡本まどか | 作成日時：2021年2月10日 22時
