『Secret_Vol.13』 ページ14
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大学の入試なんかよりずっと緊張した。
例によって一人きりの家のリビングで、自分がこんなにも恋愛に奥手だったことに驚く。
いや、相手が相手だからだろうが。
とにかく俺は今、藤井さんを誘うことに成功した。
デート。
すぐにその言葉が脳内予測変換で出てくる。
ついこの間成人した男が、男とのデートで喜んでいる姿。
恥ずかしいけれど、今の俺にとっては悪くない事だ。
もう、俺自身を隠す気は全くない。
だって、もうきっと向こうも好きだから。
自信がある。
完全なる自惚れではあるものの、今までとは明らかに何か違う感覚。
1歩踏み出せたような、そんな不思議な温かさ。
藤井さんといる時の時間は、そんな感じだ。
想いが抽象的すぎて自分でも時々理解できないが。
とにかく、ようやく俺は、自分の思う通りに･･･。
そう思った時だった。
スマホが鳴った。
電話の相手は、母親だった。
｢･･･なんでやねん、今までかけてきたことなんか1度もないくせに｣
俺が後先も考えず家を出てから1度も会っておらず、メールすらしていない母親。
なんの用かは分からなかったけれど、正直あまり出たくなかった。
俺はスマホを手に取って、電話には出ずにそのまま切る。
何故、今なのか。
あの日もそうだが、母親はつくづくタイミングが悪い。
よりにもよって今までの藤井さんとのことを思い返して次のステップに行こうとしている時にかけてくるなんて。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『あんたは男なんだから、女の人を好きにならなきゃいけないの！！』
『どうしてあんたは普通でいてくれなかったのよ！！』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ああ、やめてくれ。
俺の頭をその声でいっぱいいっぱいにされるのはもうごめんだ。
普通じゃなくても、構わない。
むしろ他の人と被ってない、特別な道なんだから。
そう、思っているのに。
母親のことがチラつくと、段々藤井さんとの時間が不安になってくる。
大好きな人との時間に、繋がりにくいラジオのようにノイズが入る。
｢･･･やっぱり、あかんの･･･？｣
嫌だ。
この気持ちを、このままにしておきたくない。
けれど世間と俺は、やはり少し違う。
世間から浮くこと。
それは、もしかしたら、この世界からいなくなってしまうということなのかもしれない。
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岡本まどか(プロフ) - にらさん» コメントありがとうございます！出会えてよかったとまで言って貰えるなんて･･･恐縮です笑 これからもよろしくお願いいたします^^* (2021年2月12日 17時) (
レス) id: 36ad40152b (このIDを非表示/違反報告)
にら - えっ、好きすぎるんですけど？世界観最高すぎやしません？？ほんまにこの作品に出会えてよかったですわ笑更新頑張ってくださいっ！ (2021年2月11日 22時) (レス) id: 34a7964571 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：岡本まどか | 作成日時：2021年2月10日 22時
