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Aside
貴「耕作は...?こんな過去を持った私、嫌でしょう...?母親はどこに逃げたか分からない。父親は犯罪者。嫌なら言って?」
弓野は涙を流し、俯いた。
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弓野の周りをお風呂上がりの同じ匂いが包んだ。
それが藍沢に抱き締められているものだと認識するのには少し時間がかかった。
藍「つらかっただろう。これまで十数年間溜め込んできたんだ。よく...我慢した。」
弓野の傷ついた心に、藍沢の言葉が染み込んでいく。
藍「俺は嫌とは思わない。むしろここでちゃんと話してくれたことが素晴らしいことだと思う。これまで隠し通してきたことを、出会ってまだ2年の俺に話した。人をちゃんと信頼できている証拠だ。」
貴「...っ!」
言葉にすることができない弓野の目にまた涙がたまる。
藍「よく、ここまで頑張ったな。」
その一言をきっかけに弓野は号泣する。
貴「...っあり...がとうっ...。」
藍沢に抱きしめられ、強張っていた弓野の体も今は力が抜けて自然体となっている。いつしか弓野の腕は藍沢の腰に回っていた。
藍「大丈夫だ。何かあったら俺が聞く相手になる。だから、自分に素直になれ。」
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藍沢の胸に顔を埋め、弓野はコクコクと頷いた。
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どれくらいの時間が経っただろうか。外は雨が降りしきる中、2人は抱き合ったまま、弓野は安心したのか、藍沢の腕の中で眠り、藍沢は弓野を大事そうに抱えながら眠っていた。
貴「...んっ...。あれ、私...寝ちゃってた...。」
弓野は起きると、自分の置かれている状況に気がつく。
貴「え....。あ、そっか。」
先ほどまでの出来事を思い出す。藍沢の腕を解こうとするも、力が強く解けない。
仕方ないと諦め、弓野は思い返していた。
『よく頑張った』
『自分に素直になれ』
この言葉は長く縛り付けられていたあの過去から弓野の心を溶かす材料となった。
貴「ありがとう耕作。...耕作に何かあったら、今度は私が守るから。」
雨の降りしきる日に起きた2つの出来事。
弓野にとって忘れられない、つらくもあり、幸せな過去でもある。
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彩架(プロフ) - 21の「道」→「未知」ですよ (2018年10月27日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
AK - 41 「重症」が「受賞」になってます (2018年10月1日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - lovemimiさん» アンケートありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいばかりです。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - 桜さん» アンケートありがとうございます!更新頑張ります! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - ミカドさん» アンケートありがとうございます! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すとろべりー | 作成日時:2018年9月5日 21時