劇場版コードブルー～ドクターヘリ緊急救命～ (ページ43)

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剛「...。」

剛志は考えたが何も浮かばなかった。

当たり前だ。剛志はこの男について何も知らない。家の外に男を作り、母親に家を出ていかれ、父親は酒に逃げた。仕事までも放って酒に溺れ、本当にタチが悪かった。

そして、剛志が母親に似ているためか、「お前を見ているとあいつを思い出す。」と、まるで母親に復讐をするかのように毎日殴られ、蹴られ、暴力を振るわれていた。

やがて父親は仕事にも出なくなり、貯金は底を尽きた。自分はまだ小さくて働ける年齢ではなかったため、剛志は盗みを繰り返した。

そんな日々を過ごした。

このままでは自分の人生は終わりだ。早くこの家から逃げ出さなければ...。

この想いを脳裏に浮かべ、剛志は弓野に話しかける。

剛「俺、11歳の時に自分で児童相談所に電話したんです。」

弓野はちらりと剛志に目をやる。

剛「裸足で家を飛び出して、道で人に携帯借りて。父に殺されるかもしれないから助けてくださいって。」

冷静に剛志の姿を見る弓野とは打って変わって、藍沢と雪村は驚きの表情で剛志を見ていた。

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剛「あの電話した時の気持ちは今も忘れられません。それ以来、父とは会っていませんてました。飲んでる薬どころか、最近どんな生活してるのかも知りません。顔だって今日会うまではほとんど忘れてた。」

藍「...。」

雪「...。」

剛「...だから、教えられることがありません。すみません。」

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しかし、こう口にする剛志の脳裏には、罪悪感が芽生えていた。

なぜ...。こんな酷い仕打ちをされてきたのに、なぜこの男のことを心配している自分がいるのか。

微かに、まだ母も家にいて、楽しく食事をしている家族だった頃の思い出が蘇る。

そうだ。自分には、つらい、ひどい思い出だけではない。

剛「...ひとりで惨めに死ねよって。俺、10年ぶりに会った親父にそう言ったんです。本当に伝えたかったのはそんなことじゃなかったのに。」

鼻の奥がツンとした。剛志は思わず声がうわずった。

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藍「よく逃げた。」

え？と剛志は藍沢を見た。

藍「11歳だ。家を出れば、自分以外に頼れる人間がいなくなることは想像できたはずだ。不安もあっただろう。」

剛「...。」

藍「子供は親を選べない。」

藍沢の言葉が剛志の心に響いていた。