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スタッフステーションに戻った緋山は、パソコンでカルテの整理を始めた。同じように隣の席でパソコンのキーを叩いていた白石が手を止めて尋ねた。
白「ねぇ。どうやったらああいう風に話せるの?」
先ほどの緋山と未知との会話を見ていた白石が聞いた。
緋「...なに?」
白「緋山先生っていつもはズバズバものを言うくせに、それが返って人の心を打つ。」
緋「なによ気持ち悪い。」
緋山は緒方とのことがあって純粋に喜べなかった。
白「ずるいよ。こっちは色々考えて、やっと言っても相手に届かなかったりしてるのに。」
後先考えずに発言しているような緋山が、あっさりと患者の心を溶かしていく。そんなことは白石は出来ない、と思っていたのだ。
緋「あんただって頼りにされてるじゃない。」
緋山はスタッフステーションの入り口に目をやった。「ほら。」と白石に言うと、やって来たのは名取だった。
名取は一瞬緋山の方に目をやるが、すぐに視線を外して白石の方へと顔を向けた。
名「白石先生、ICUの久保田さん、そろそろCHDF終了してもいいと思うんですが。」
白「あぁ。...今朝のデータも良くなってたし、いいんじゃない?」
名「分かりました。」
名取は去り際に再び緋山の方を見る。しかし、何も言わずにICUの方へと去っていった。
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緋山の助言あってか、未知はすぐに彰生をHCUに招き入れた。一度自分の気持ちに蓋をした未知にとって、その蓋を外し、何より彰生と普通に話せていることに嬉しくなり、涙が溢れてくる。
彰生の強い気持ちもあり、残りの人生、未知は彼とともに生きていくことを決めた。もう迷わない、そう決意した。
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話しているとあっという間に時は過ぎる。外はすっかり夜の帳に包まれていた。
結婚式場のパンフレットを見ながら、くっついて話している未知と彰生に冴島が声をかけた。
冴「そろそろ休んだほうがいいですよ。」
未知の苦しい呼吸音を冴島が聞き取ったのであろう。
彰「あ、すみません。...面会時間、終わりですよね。」
腰を上げようとした彰生を冴島が制し、唇の前に指を立てて内緒ね、という合図を送り、ベッドの周りのカーテンを閉めた。
冴「富澤さんは休んでくださいね。」
2人に微笑んだ冴島は未知のベッドから離れた。
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彩架(プロフ) - 21の「道」→「未知」ですよ (2018年10月27日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
AK - 41 「重症」が「受賞」になってます (2018年10月1日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - lovemimiさん» アンケートありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいばかりです。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - 桜さん» アンケートありがとうございます!更新頑張ります! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - ミカドさん» アンケートありがとうございます! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すとろべりー | 作成日時:2018年9月5日 21時