劇場版コードブルー～ドクターヘリ緊急救命～ (ページ30)

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HCUで緋山が患部を診ている間、未知はずっと扉の外を気にしていた。未知の思いを察したのか、緋山は口を開く。

緋「岩田さん、今日も来てますよ。」

未「...どうしたらいいと思う？」

しばらくの間を置き、未知は話し出す。

未「忘れられるのは嫌。でも、私のことを引きずって彼が悲しみのなかで生きていくのはもっと嫌。」

未知の本音を聞いた緋山の目に冴島の姿が映る。

緋「どちらにもなれないかもしれません。」

緋「私は知っています。そのどちらにもならなかった人。その女性は大切な恋人を病気で失った。でも大きな悲しみから立ち直って、今は新しい人生を歩き始めている。...彼女は何一つ彼のことは忘れていないし、今、不幸でもない。それは彼女が最後まで彼と向き合い、なくなった彼も彼女にきちんと思いを伝えたから。そういう時間を2人が過ごして来たから。」

緋山の視線の先を未知は辿る。未知ははっきりと冴島の姿を捉えた。

まさか、彼女がー...

未知はふと思い返す。
自分が寝たふりをして聞いていたあの会話。幸せそうなカップルの話にしか聞こえなかったのに、2人の過去には一体どんなものがあったのかー...。

と、ここで緋山がさらに話を続ける。

緋「そしてあなたの担当医、彼女もまた想像を絶するような過去を抱えている。」

未「...え？」

緋「私から直接言うことを出来ない。...けれど、医局でいっつも富澤さんのこと、気にかけてるんですよ。」

未「A、先生が...？」

緋「そ。愛する人の前では素直でいてほしい。彼女、そう言っています。弓野は、岩田さんという富澤さんにとって大切な人がいるということを、富澤さんのご両親、そして岩田さんご本人に会う前から気づいていました。」

未「え？」

緋「その能力、医者の私でも本当に素晴らしいと思います。弓野は、医者として本当に強い。けれどその分、我慢する。だからなんだと思います。富澤さんに、素直でいてほしいって言ってるのは。」

緋山は真っ直ぐに未知を見据えて言った。

緋「あなたに残された時間は少ない。...でも、今をどう生きるかは選ぶことができます。」

未知はコクリと頷いた。

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