劇場版コードブルー～ドクターヘリ緊急救命～ (ページ29)

今日:1 hit、昨日:46 hit、合計:462,623 hit

29 ページ29

看護記録を書き終えた雪村は重い腰を上げた。
先程横峯に「相談室で待ってる。」と言われたからである。

雪村が相談室に入ると、藍沢と横峯が待っていた。

藍沢がタブレットのカルテに視線を落として言った。

藍「アルコール性肝硬変による食道瘤もある。これまで通院していた病院に戻るか、うちの病院で硬化療法するか家族で相談して決めてくれ。」

藍沢に対して雪村が答えない。

横「...雪村さん？」

、

、
雪「姉に...聞いてください。」

雪村は2人の視線に耐え切れず、声を荒げる。

雪「母とは関係ないところで生きるって決めたんです！」

藍「...それも１つの生き方だ。罪悪感を感じる必要はない。」

藍沢は雪村が声を荒げたにもかかわらず冷酷に答えた。

雪「...藍沢先生みたいに、医学部出て...医者になれるような家庭に生まれた人には絶対わかりません。私がどんな気持ちであの家を出て...看護師になったか...。...失礼します。」

雪村はたまらず相談室を出た。

、

、

、

相談室を出ると横峯が追いかけてきた。

雪「...何？」

横「...治療方法だけでも、ちゃんと話し合ったほうがいいと思う。アルコール依存症って10年以内に3割の人が亡くなっているって言う報告もある。軽く考えるのは危ないよ...。」

雪「軽く？」

雪村は皮肉交じりの笑みを見せ、横峯の言葉を遮った。

雪「教えてあげようか。うちの1番いい思い出はね、家族みんなで食べたハムエッグ。家族4人で卵２つ。ハムは確か1枚だけ。料理をしない母に変わって姉が作ってくれた。1番いい思い出がそれよ？」

雪村はきつい視線を横峯に向け、その場を走り去った。

、

、

その頃、相談室には藍沢と弓野が残っていた。どうやら弓野は雪村が出ていった後に来たらしい。

貴「...大丈夫？」

藍「あぁ。問題ない。...それより、お前の方は大丈夫なのか。」

貴「...もしかして、富澤さんのこと？」

藍沢は無言で頷く。

貴「...私の過去に重なるといえば重なる。でもね、富澤さん、ちゃんと前向けてると思うの。」

弓野は少し沈黙を置き、また話し出す。

貴「私はあの時、完全に折れた。もう、何もかもが嫌になって、自暴自棄になった。だけど、富澤さんはそうじゃない。支えてくれている人だっている。だから大丈夫よ。」

弓野は上を向きながら話す。

弓野の目には涙が溜まっていた。