劇場版コードブルー～ドクターヘリ緊急救命～ (ページ22)

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その頃、相談室には未知の両親が訪れていた。弓野から娘の症状の説明を聞き、父親がつぶやく。

父「骨折で8週間か...。」

父親の言葉が重さを持ったようにコトンと落ちる。

父「怪我が治るまでは持ちませんね。その時は...すみませんが...。」

弓野はそれ以上続けられなかった。小さく頷いてつぶやく。

貴「ご連絡するのは、ご両親だけでよろしかったですか？」

父「あぁ。...はい。」

隣に座っていた母親が夫に顔を向けた。

母「彰生くんは？やっぱり知らせた方が...。」

貴「失礼ですが、アキオくんというのは...。」

母「結婚するはずだったんです。」

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弓野の思い当たる節が繋がった。

貴「あぁ。それで...」

父「何か...未知が言ったんですか？」

貴「いいえ。未知さんがたまに悲しそうな表情をすると看護師が言っていたもので...。」

父「そうだったんですか。」

父親は俯き、悲しそうな表情をした。

父「今更やめておこうか。...私たちだけで結構です。」

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ブライダルチェックでがんが見つかった。早期だったら不幸中の幸いだったと前向きに捉えることもできるであろうが、スキルス性は進行が早い。

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今に至るまで未知とそのご両親がどんなに悩み、苦しんだかは弓野には想像もつかない。だが、どうにかして心の整理をつけようとしているのは痛いほどわかる。

医師としては彼女たちに寄り添い、全力で治療にあたるしかないのだ。
"医者は無力だ。"と弓野は未知のご両親との出会いで痛感した。

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貴「...未知さんと、約束をしました。」

少しの沈黙を置き、続けて弓野が話す。

貴「未知さんはとても強い女性です。看護師に自分にできることを奪わないで欲しいと言いました。私は、そう言った彼女の目から強い意志を感じました。言葉では諦めたことも言ってしまうかもしれませんが、心ではそう思ってないと思います。そんな中で容体が落ち着いたら屋上で夕日を見ようと言ったんです。」

未知の母親の目に涙が溜まる。

貴「...だから私も、未知さんの容体が少しでも回復するよう、全力を尽くします。」

父「...っあ...ありがとう...ございますっ...。」

相談室には雰囲気の良い空気が流れていた。

弓野は気持ちを切り替え、事務手続きなどの説明を始めた。