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未「やめて!」
未知にてを振り払われ、冴島はハッとする。
未「トイレくらい自分で行く。」
冴「...はい。」
看護師になっていつも思うのは患者との距離感の難しさだと冴島は思う。
貴「富澤さん?」
未「...何?」
貴「トイレはそこの扉出てから右に曲がったところが1番近いわ。...それと、そのトイレの先の窓から見える夕日は綺麗よ。」
未「...ぁ、ありがとう。」
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いつも思う。冴島にとって良かれと思っての言動が、時に患者のデリケートな部分に触れてしまう。しかし、弓野はそのデリケートな部分には触れず、些細なことでも患者の変化に気づき、それをうまく患者に伝える。冴島本人としても、看護師としてもその気遣いには惚れ惚れするほどだ。
弓野に見習い、冴島はいつしか患者とうまくコミュニケーションを取り、信頼関係を築き上げ、少しでも心の負担を減らしてあげたいと思うようになった。
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そんな冴島の沈んだような表情を浮かべたのに気づき、未知は手すりにつかまったまま口を開いた。
未「...半年前、突然走れなくなった。3ヶ月前、大好きだったお肉も胃が受け付けなくなった。2週間前、何かに掴まらないと立ち上がれなくなった。」
...未知の顔に悔しさがにじむ。なぜ自分なのだろうかと。
未「.....でも。っまだ歩ける。トイレに行ける。トイレに座って思うの。あぁ。私、まだ生きてるって。だから、これ以上できることを奪わないで。」
未「それと...A先生...だっけ。教えてくれてありがとう。死ぬ前に、夕日、見たかったから。」
貴「いいえ。容体が落ち着いたら、屋上から見ましょうね。...約束よ?」
未「...わかった。」
弓野は未知と約束事を交わし、HCUを立ち去った。
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冴「...すみません。」
重くなったその場の空気に、未知も言いすぎたかと後悔をした。その場の空気を断ち切るかのようにボソッと呟く。
未「...ビスチェタイプが似合うと思う。」
冴「...え?」
未「ウェディングドレス。あなた、背が高いし、細くて綺麗な首だから。」
照れたように目を伏せながらトイレに向かう未知の姿を見て、冴島の心は少し軽くなった。
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道はトイレに座るとふと呟いた。
未「約束...か。」
先ほど交わした弓野との約束。友人のように自分と接する弓野と交わしたあの約束は未知の生きがいの1つと化した。
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彩架(プロフ) - 21の「道」→「未知」ですよ (2018年10月27日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
AK - 41 「重症」が「受賞」になってます (2018年10月1日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - lovemimiさん» アンケートありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいばかりです。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - 桜さん» アンケートありがとうございます!更新頑張ります! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべりー(プロフ) - ミカドさん» アンケートありがとうございます! (2018年9月18日 22時) (レス) id: 69bfdd0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すとろべりー | 作成日時:2018年9月5日 21時