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「あの....伊野尾さん」
「なんですか?」
少しの濁りも見当たらない澄み切った瞳が俺を映す。
俺の緊張が伝わったのか、どことなく背筋が伸びたように思えた。
「実は....出会った時から伊野尾さんのこと気になってて、ここ来るたびにあなたのことが好きになってました。伊野尾さんがもしよければ....僕と付き合ってくれませんか?」
2人の間に静寂が流れる中、俺の心臓はドクドクと大きな音を立てて波打っていた。
この沈黙が長かったか、短かったか、伊野尾さんは最初大きく目を開いてて思考が停止しているようで
そして少し申し訳なさそうに視線を逸らした。
「山田さんの気持ち、とっても嬉しいです....でも....ごめんなさい。山田さんの気持ちには応えられないです」
小さな声だったけれどはっきりと彼女はそう言った。
その瞬間、ああ、俺の片思い終わったなと思った。久々に恋したんだけどな、とも。
でもやっぱりなという気持ちもあった。
だってあなたの瞳にはいつも_____
「もしかして、大ちゃん?」
「えっどうして....」
「伊野ちゃん、大ちゃんのこと好きなんでしょ?好きな人の好きな人、ずっと見てたら分かるよ」
あなたの視線の先にはいつだって有岡がいた。
だから、俺が気持ちを伝えたところで最初から結果は見えていたのだ。
それでも俺の気持ちは知ってて欲しかった。だからこれは俺の自己満足。
「あー気持ち伝えたらスッキリした!!ね、そうなんでしょ?教えてよ」
努めて明るい声を出した。彼女を困らせたくはない。
伊野尾さんは俺の問いに小さく頷くと「バレてましたか....」と観念したように呟いた。
「やっぱり!ね、大ちゃんのどこが好きなの?あ、俺のことは気にしないで。もう吹っ切れたから」
嘘だ。そう簡単にこの恋を諦められるほど俺は強くない。
でも、今はこの気持ちにそっと蓋をする。
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トコロテン(プロフ) - コメントありがとうございます。これからも大好きな作品だと思ってもらえるように自分なりに頑張ろうと思います。 (2021年4月11日 10時) (レス) id: c29fd865d8 (このIDを非表示/違反報告)
涼芽 - この作品が大好きで、いつも学校終わりに楽しみにしてます! (2021年4月9日 22時) (レス) id: a4663d5dbf (このIDを非表示/違反報告)
トコロテン(プロフ) - 感想ありがとうございます。そう言ってもらえると自信に繋がります。ただ、このお話読んでくださってる方のほとんどだと思いますが、私も現在、また心が病み気味なのでしばらくは更新しないかもしれません。ゆったりお付き合いください。 (2021年4月7日 11時) (レス) id: c29fd865d8 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - はじめまして。トコロテンさんが書く作品、大好きで話が更新されると嬉しいです! 何度も読み返しています。これからも無理せず続きを書いてくれたら嬉しいです。楽しみに待ってますね。 (2021年4月7日 7時) (レス) id: 5307737ff6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トコロテン | 作成日時:2020年6月8日 14時