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撮影が終わり、次の収録現場に向かおうと荷物をまとめていると大ちゃん、と後ろから山田に声をかけられた。
「....何?」
少しぶっきらぼうな言い方になってしまったようで、俺の反応を見て山田は、いや、大した話じゃないんだけど、と言いにくそうに呟いた。
「最近、大ちゃんいつもどこかボーっとしてるよね?あんまり仕事に身が入ってないように思うんだけど。キツイこと言ってるかもだけど、周りのスタッフさんに迷惑がかからないように気持ちを切り替えるのがプロなんじゃない?」
「....分かってるよっ」
そんなこと言われなくても自分で分かってる。体が言うことを聞かないのだ。
少しイラついているのが伝わったのか山田は悲しそうに目を伏せてさらに今触れられたくない核心まで突いてきた。
「あのさ、最近大ちゃん俺のこと、避けてるよね?最近変だよ」
「っ....!!!」
「ねぇそうでしょ?何で?俺、大ちゃん怒らすようなこと言った?俺....大ちゃんが何考えてるのか分かんない」
絞り出すように吐かれたその一言に俺の中で何かがプツンと切れるような音がした。
「ぁあ、分かんないだろうな山田には」
「え....」
視界の隅で知念が急に声色が変わった俺に目を見開いたのが見えた。
「カッコ良くて、演技もできる、そのくせ面白くって弄られキャラ。エースなのに優しくて高を括ってないところが良いって皆から好かれて、俺が唯一自信があったダンスまで、俺より上手い山田
「大貴ッ!!いい加減にしてっ!!」
パチンと乾いた音が部屋に響き、右頬に痛みが走る。
顔を上げると目に涙を溜めながらわなわなと震える知念と目が合った。
「....大貴に何があったのか知らないけど、その言い方は酷いよ。ボクは大貴のことが大好きだけど、今の大貴は、嫌い。だって涼介が誰よりも努力してダンスも歌も演技も全力でやってきたの、誰よりも側で見てたのはボクたちでしょう?センターなったのだって涼介の努力の結果、涼介が皆に好かれるのもその結果でしょ....?」
「....ゴメン、でも今は冷静に喋れない。ちょっとほっといてほしい」
「ちょっ!有岡君!!」
高木の声を背中に受けながら一人、楽屋を飛び出した。
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トコロテン(プロフ) - コメントありがとうございます。これからも大好きな作品だと思ってもらえるように自分なりに頑張ろうと思います。 (2021年4月11日 10時) (レス) id: c29fd865d8 (このIDを非表示/違反報告)
涼芽 - この作品が大好きで、いつも学校終わりに楽しみにしてます! (2021年4月9日 22時) (レス) id: a4663d5dbf (このIDを非表示/違反報告)
トコロテン(プロフ) - 感想ありがとうございます。そう言ってもらえると自信に繋がります。ただ、このお話読んでくださってる方のほとんどだと思いますが、私も現在、また心が病み気味なのでしばらくは更新しないかもしれません。ゆったりお付き合いください。 (2021年4月7日 11時) (レス) id: c29fd865d8 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - はじめまして。トコロテンさんが書く作品、大好きで話が更新されると嬉しいです! 何度も読み返しています。これからも無理せず続きを書いてくれたら嬉しいです。楽しみに待ってますね。 (2021年4月7日 7時) (レス) id: 5307737ff6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トコロテン | 作成日時:2020年6月8日 14時