踊ってよ君らしく ar×in♀

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「それでは新月曜ドラマ、『キャラメルポップコーン』主演の山田涼介さんと有岡大貴さんでーす」


「よろしくお願いしまーす！！」



クランクインの日を迎え、いよいよドラマ撮影がスタートした。



このドラマはいわゆる大学生学園モノのラブコメだ。




何をやっても万能で誰に対しても優しい、だけどホラーと絶叫系アトラクションが引くほど苦手な残念イケメンの和泉秀作役が山田。


それに対して俺は、リアクションが子供っぽくいつもおちゃらけていて飄々としているが、根は真面目で負けず嫌いの鈴木颯馬役を演じる。




この2人がヒロインを奪い合い３角関係になるというのがざっくりとした設定らしい。







撮影は順調に進んでいるが、初めての主演、今までとはまるで違うセリフ量に休み時間も覚えるのが精一杯で他のキャストさんやスタッフさんとコミュニケーションが全く取れていない。




山田が俺の分までフォローしてくれている状況だ。



なんとかこの状況に一刻も早く慣れなければ。そう思うのに同じセリフを何度も噛んだり、逆に抜け落ちたりして撮影を止めてしまっている。



監督さんが穏やかな方で「大丈夫、大丈夫」と笑顔で言ってもらえるし、現場の雰囲気も至って和やかだ。




でも優しくしてもらっているが故に申し訳ない気持ちが高まり、何としてでもちゃんとしなければと焦りを生む。





そしてその焦りは他のことにまで影響する。


ユニットだってそうだ。爽やかな王道アオハルラブソングで、明るい曲なのにレコーディングはイマイチ、ダンスはまた踊れない、前回の振り入れではまた同じ振付師さんに怒鳴られてしまった。




「有岡、お前、真面目にやってるのか！？ダンス何年やってきてんだよ！！」


「っ、すみません....」


「ちょっと待ってください、大ちゃんだって真剣に....」


「真剣？そんなの俺には微塵にも感じられないね。そんなんでよく平然としてられるよな」





正直、この言葉には結構堪えた。


俺、ダンス好きだし得意だったはずなんだけどな....





この短期間でもう感情がぐちゃぐちゃだ。



どうすればいい？どうするのが正解だ？





「あ....」





仕事終わり、気づけばフラフラとスクランブルの扉の前まで来ていた。






ｶﾗﾝｶﾗﾝ

「あ、お久しぶりです。有岡さん」


いつもと変わらずふわりとした笑顔で迎えてくれる伊野尾さん。




....ああ、やっぱり俺はこの時間を求めていたんだ。

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