アホ犬と男装御主人様！！ (ページ16)

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《第十六匹》慎也の心ページ16

慎也side

「......ん。」

暗闇から一転、目を開けると溢れる程の光が俺の目に飛び込んでくる。

起き上がろうとした...が、起きれない。

なぜかって？それは...Aが俺の胸辺りで寝ているからだ！！

「ん...。」

Aが何気に色っぽい声を出した。

てか...何だ。これ...。

こんな生物がいていいのか...？

吸い寄せられるような淡いピンクの唇、白い肌、長い睫毛、サラッとして艶やかな黒髪、華奢な体躯...。

そんな事考えてると、突然抱きついてきた。

...誘ってんのか！？襲えってか！？

こんな目の前に女が転がってたら、襲うのが常識でしょう！

いざ、参らん！

......なんてな。

俺にはそんな事出来ねぇよ。

「...お......ん、...じ...ち...。」

何だ、Aはまだあの時の事、覚えていたのか。

もう、忘れていてもいいのに。わざわざ抱え込みやがって...。

慎也はフッと笑い、Aの髪を少しだけ優しく撫でた。

...隼人、速く気づけば良いのにな。

じゃねぇと...俺が、取るぞ。

ま、俺なんかより隼人の方が良い奴だから、もし、隼人がこいつの事好きになったら、いや、多分、もう好きになってるな。気づいてないだけだ、アポ野郎だしな。...ま、だから応援してやるさ。

あいつは、馬鹿だし、鈍感だけど、人が良くて、面倒見も良いし、人の良い所しか見れねぇし、何より自分の事なんかよりも先に人の事ばっか心配しやがって...。

そんなあいつだから、いくら好きな奴でも、応援してやりたくなる。

こんな汚ぇ俺とは違う。

だから、俺が悪役になっても良い。まず、気付かせてやる所からだけどな。

タッタッタ...。

この足音は...隼人か。

じゃ、邪魔者の俺は退散としますか。

Aが起きないようにそっとベットを出て、いくら春とは言え風邪を引いてしまうから、布団の代わりに俺のブレザーをかける。

そして、誰にも気づかれないように保健室のドアを開けた。