Greeting . ページ8
＊
｢……………ということじゃ｣
｢…………｣
愛が泣き終わってから、俺達はリビングに来た。そして、じいちゃんが女＿＿＿佐野龍嘩の話をした。
なんでも、俺が赤ん坊の頃に拾った子供らしい。俺が3歳くらいの頃に植物状態になった、と言われても記憶が無い。ただ、シンイチローもじいちゃんも偶に花を持って病院に行ってたのを知っているぐらいだ。
じいちゃんはまた口を開いた。
｢アイツは………血は繋がって居なくとも、家族じゃ｣
｢…………知らね｣
俺はそれだけ言って、立ち上がる。
………イザナの時と同じ気持ちだ。
＿＿＿そのイザナは、死んだ。
あの女も………きっと死ぬ。
もう兄妹なんて持ちたくない。………また居なくなるのだから。
そんなことを思いながらリビングを出て、自分の部屋に向かう。その途中、仏壇の部屋から声が聞こえた。
覗いてみると＿＿＿龍嘩が居た。
龍嘩は煙草を口に含んでいた。そして、それを口から離して、仏壇に線香のように刺した。
｢…………アンタ、これ吸いたいって言ってたもんね。大人になってから吸ってたかは分からないけど、餞別だ。
酒は………買ってくるの忘れた。許せ｣
そう言って、シンイチローの写真を見る。懐かしげな目だ。
｢………人の気持ちも知らないで幸せそうな顔しやがって。昔からいつも笑ってたもんな。
それはわかるけどさ………寂しいわ、馬鹿｣
｢…………！｣
龍嘩は泣いていた。でも、口元だけで笑いながら言葉を紡ぐ。
｢弟、大事にしてたろ、アンタ。
大事なモン遺して死んでんじゃねえ………ッ｣
｢…………｣
啜り泣く声。聞いてるのがしんどくなって、離れようとした時＿＿＿龍嘩の声が、またした。
｢＿＿＿＿決めた。
私、アンタの守りたかった弟を守るよ｣
｢＿＿＿！｣
思わず、振り返る。
見ると………龍嘩が俺を見ていた。涙に濡れた茶色がかった黒瞳が、俺を捉えている。
そして、笑った。
｢よろしくね、………マンジロー｣
｢……………｣
俺はその言葉に答えず、その部屋を素通りした。けど、胸は騒がしかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：O | 作成日時：2021年10月17日 17時
