龍は目覚めて愛を紡ぐ (ページ50)

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龍は動き出すページ50

＊

　｢～♪｣

　夜、私は携帯を弄ってた。
　今日友達になったヒナちゃんとのメールだ。最近流行りのファッションとかスイーツとか………野郎にはわからない女の事情を教えてくれる。

　最初は万次郎に教えて貰いながら……というかキレられながら教わってたけど、今はこのとおり、手足のように使える。機械文明最高だよホント。ポケベルの比じゃない。当たり前だけど。

　そんなことを思ってるとピロリン、とまた携帯が鳴った。メールを押すと、当たり前のようにヒナちゃん。けど、内容は当たり前じゃなかった。

　＿＿＿＿＿＿

　話変わっちゃうけど、会って欲しい人が居るの。

　今のマイキーくんを止める為に、必死な私の好きな人。

　お願い、時間を作ってください!!

　＿＿＿＿＿＿

　｢………ほほぅ？｣

　私はメールを眺めながら、声を漏らす。
　マイキー、というのは弟の渾名らしい。由来はよくわからない。けど、皆呼んでる。外国人みたいな名前。金髪も相まって実は外国人？………なんて、冗談はさておき。

　＿＿＿今の万次郎を止めたい。
　最近比較的変わってきたんじゃ？とは思うけど、不意に悲しげな顔をする。今日も集会とか言って出払ってる。

　私と高校には行ってくれてるけど、夜出歩く頻度は上がっている気がする。そして、ニュースを見ればいつも『非行少年』という文字を見る。道路で戦争なんて見境の無いことをしてるのも、………そこに万次郎が居るのも、知ってる。

『関東卍會』、『梵』、『六波羅単代』………そんなんが流行っている、不良界では専らの噂。私も絡まれたことがある。

　＿＿＿＿馬鹿らし。

　率直な感想。なんで陣地とか何派とか決めるんだろう。私の知ってる暴走族は＿＿＿もっと自由だ。

　とはいえ、だ。
　私は万次郎のお姉ちゃん。万次郎が好きでやってんなら止めないけど、明らかに楽しくなさそうだし………受け止める、って決めたから。

　私はカチカチ、と音を鳴らして携帯を打つ。そして、送信ボタンを押してから、布団に放り投げた。

　＿＿＿＿＿

　いいよ、会って話は聞く。
　そこから先は内容次第だけど。

　日にちはいつでもいいけど、万次郎がいない夜がいい。

　月の綺麗な夜ね。

　＿＿＿＿

　………はてさて、私に会いたいなんて言う命知らずはどんな奴かねえ？

　そんなことを思いながら、煙草に火をつけて窓から空を見上げた。