その気持ちは #ドラケン ページ37
＊
マイキーはあの夜から、結構な頻度で俺の職場に来るようになった。以前喧嘩で感じたどうしようもないくらい悪に染まろうとしていたマイキーが元に戻ったのだ。
それは紛れもなく＿＿＿リューカさんのお陰だ。
バイクを弄りながら、遠目からリューカさんを見る。丁度来ていた客となにやら話をしているらしい。あの人も伝説の暴走族『OZ』のメンバーだったらしいから、仲が悪いわけがない。
だがしかし。
｢マイキー｣
｢…………｣
｢おい、マイキー｣
｢…………｣
目の前にいるマイキーは射殺すように2人を睨んでいる。俺にバブを弄らせて置きながら、だ。
マイキーの話によるとリューカさんは、マイキーの血の繋がらない姉さん、らしい。……沢山の兄妹が死んでしまった今、マイキーが固執するのはわかる。
とはいえ、だ。
｢…あんま睨むなよ。リューカさんに気づかれんぞ｣
｢……あの男、ムカつく｣
｢だからって喧嘩は売るなよ。リューカさんキレたらこえーんだろ｣
そこまで言うと、マイキーはしぶしぶ座った。そして、俺を見る。
｢………ねえ、ケンチン｣
｢んだよ｣
｢俺、おかしいんだ｣
｢おかしい？｣
そう聞き返すと、マイキーはこくり、頷いた。そして言葉を重ねる。
｢リューカが男と話してんの、ムカつく。……こんなにムカついてんのにリューカの事考えんの、おかしくね？｣
｢………お前、そりゃ完璧に……｣
｢？｣
｢あ、……｣
自分の口を手で覆った。思ったことを言っちまった。……でも、そんなの『異性として好き』だろ。
いくら血が繋がってないとはいえ、姉弟と言ってる以上、言っちゃならねえ。
｢"好き"だよ、………たった一人の姉ちゃんだ｣
｢ま、まあ、そうだよな｣
｢変なケンチン｣
｢うるせえ。……それより、そんなに姉ちゃん大事なら、いい加減大人しくしろよ。『関東卍會』なんてしてねーで｣
これ以上話を膨らませるのはよくない、そう思って話題を逸らした。マイキーは『関東卍會』という言葉を聞いて、眉を下げた。
｢……わかっている｣
｢本当か？｣
｢……嘘｣
マイキーはそう言って、項垂れた。
｢………お前、また大事なモン傷つけんのか？｣
｢…………それ以上言うな。バブの相手してろよ｣
｢…………はあ｣
拗ねたような口調でそう言われ、溜め息が出た。
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作者名：O | 作成日時：2021年10月17日 17時
