Different idea . ページ31
｢で、なによ、これ｣
｢見たらわかんじゃん。コーヒー。……さっき負けたからな｣
｢あ、………｣
そう言われて思い出す。
すっかり忘れてた。……それだけ、ショックだったんだ、と思うと、悲しくなった。
｢…………ありがと、マンジローは授業行きなよ｣
｢は？なんで。リューカいかないのに俺が行く意味ないだろ｣
｢…………そりゃ、そうだけどさ………｣
｢………それより、なんでリューカがかっこ悪いの？｣
ずい、とマンジローが顔を近づけて聞いてきた。綺麗な肌、女の子形無しだわ………じゃなくて、折角聞いてくれてんだから答えなきゃ、かな。
｢………このガッコ、私の思い出の場所なんだ｣
｢うん｣
｢でも……14年は長いねえ。もう、なんも面影がないの｣
｢………うん｣
｢そしたらさあ、………すごく寂しくなっちゃった。当たり前なのにね｣
｢………なあ、その顔で笑うな｣
｢むぐ、………｣
むに、と頬を引っ張られる。むにむにと弄られていると気が緩んで泣きそうになるから万次郎の胸を押した。
｢や、やへれ〜！｣
｢辞めない。………笑うの下手か｣
｢うるへえ！｣
｢………そんな顔するなら、お前の時代を創ればいいだろ｣
｢…………それはいや｣
＊ ＊ ＊
｢？｣
俺は時代を作れ、と言った。
………俺は創れなかったけど、龍嘩なら出来ると思ったから。
けど、龍嘩はそれを拒否した。
そして、頬を引っ張る俺の手を優しく解いて、真っ直ぐな瞳で言葉を紡いだ。
｢＿＿＿時代を創ったとしても、それは私の好きだった時代じゃない｣
｢…………？｣
｢うーん、なんと言えばいいのかな………｣
龍嘩は立ち上がって、遠くを見た。そよそよと吹く風を受けながら、続けた。
｢いくら似たものを作っても、それは模倣品でしかない。………本物じゃない。
あの時代、あの空間はあの時しか味わえない。だから時間を大切にするし、その時を楽しむんだよ。
で、今の時代には今の空間がある。……その『今』を生きている人の空間は、壊したくないんだ｣
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作者名：O | 作成日時：2021年10月17日 17時
