Memory . ページ15
龍嘩は、笑った。
夕日に照らされた笑顔はやっぱりシンイチローに見えて。
昔の事が頭を過ぎった。
◇ ◇ ◇
｢俺にはな、アコガレの人が居るんだ！｣
｢アコガレ？｣
15歳のシンイチローがそう言って笑った。俺が聞き返すと、頭をガシガシと撫でられた。
｢そうさ！………俺達のおねーちゃんがな、最高にかっけーんだ｣
｢………おねーちゃんなんて、いないじゃん｣
｢お前、覚えてないのか。………まあ、小さかったもんな。
けど、いるんだよ。俺は顔も知らない親より親だと思ってる！俺に生き方を教えてくれた人だ！
いつか会わせてやるよ、……目覚めたら、だけどな｣
｢？｣
｢あー、でも、マンジローは惚れるかもな〜、いいオンナだからな。流石に疎いマンジローも……俺には愛が居るから………よし！お前に譲る！｣
｢…………意味わかんね｣
俺はそう言って、シンイチローと顔を合わせて笑った。
◇ ◇ ◇
＿＿＿＿淡い記憶。
思い出した理由は、………きっと、龍嘩がその"おねーちゃん"だからだ。
そう思うと、胸が熱くなった。
シンイチローは死んだ。エマも死んだ。イザナも死んだ。
けど。
俺には＿＿＿＿おねーちゃんが、居たんだ。
｢………リューカ｣
｢ん？なーに………って！名前呼んだ！？｣
龍嘩はそう言っていつの間にか咥えていた煙草から口を離して目を見開いた。少しだけ顔が赤い。
｢うっせ｣
｢もっかい！もっかいよんで！おねーちゃんでも可！｣
｢絶対呼ばねー。あとそのタバコ、臭い。未成年のくせに吸うなよ｣
｢そんなのはどうでもいいんだよ！呼ばないと首締めるよ！？｣
｢暴力反対、………それより、今日の飯何？｣
｢おねーちゃんって呼んだ記念に今日は生姜焼き｣
｢生姜焼きて。意味わかんねー｣
思わず吹き出すと、龍嘩は本当に嬉しそうに笑った。
それを見て、何故か胸が高鳴った。
自分の胸を抑えてみる。………なんも異常、ないよな？
｢………？｣
｢よし、晩飯も決まったことだし！買い物付き合って！｣
｢金は？｣
｢勿論マンジロー｣
｢巫山戯んな｣
そんな会話をしながら、俺達は暮れていく夕日を見ながらバイクに跨った。
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作者名：O | 作成日時：2021年10月17日 17時
