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彼は、よし、と両手にブランド名の入った紙袋を下げ、上機嫌に鼻歌なんか歌ってる。
恐ろしい。会計時に聞こえた値段は、私の人生で一度も、そしてこれから一生聞くことのないほど、桁が大きすぎた。
さっきまで来ていた服は彼の持つ袋の中。今身に纏っているのは、彼が選んだ、とてもお洒落な服。こんなの似合わない、と言ったのに、「いいから」と後押しされ、結局着替えずにそのまま外に出てしまった。
『お礼は……あの…いずれ…………』
「いいのいいの、プレゼントって言ったじゃん」
『でも、いくらなんでもあの値段は』
「好きな子の為なら安いもんよ」
だから、そう簡単に好きだと言うな。軽すぎるんだ。
いけない、流石にこれは貰いっぱなしにはできない。思い出しただけで怖くなる、レジ機に映し出されたあの、ゼロの数。こんなの何かしないほうが罰が当たる。
『絶対、お返しする。お金はないけど、何か、いつか絶対にお礼するから』
「えー……あ、じゃあ抱きしめていい？」
『嫌』
「キスは」
『嫌！だ！』
毎度毎度、何故かキスをねだってくる。会った当初は変態なのかと思ったが、多分変態なんだ。間違いない。会ってすぐに、頬にだが、キスしてきたあたり絶対変態だ。
なのに、私はその変態にこうして買い物に付き合ってもらっているわけで、きっと頭がどうかしてるんだね。
『そもそも、一着でよかったのに』
「またまたぁ。お兄さんがそんなの許すわけないでしょ」
『……どうせ、バレたら、取られるし』
この服もきっと、家に帰れば奪われるんだろう。何せよ貧乏な我が家だ。金になるなら何だって売ってしまう。
買い物、楽しかったな。着替え疲れたけど、嫌な気はしなかった。
その思い出となる物は、奪われ売られ手元から離れる。
「これから俺の気に入ってるレストランに行こうと思ったんだけど」
『レっ……？！そんな、今日はもう充分なのに』
「うん、だから、俺の家行こう」
『は！？ン゙、ゴホッ、ンン゙っ』
このタイミングで咳が。空気読めよ、なんて身体に言っても意味はない。
『あ"ー、あー、んん、ケホッ』
「ちょ、どうしたの？風邪？」
『っだ、だいじょ、ぶ』
ガラガラしていて、酷い声だ。女の声じゃない。
「辛い？」
『全然』
「病院行った？」
『ほっとけば治る』
だから、家に金がないんだ。風邪を引いた奴が悪い。薬なんてない。
まあ、風邪じゃないんだが。
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夏(プロフ) - ぽてちさん» こちらこそ読んでくださりありがとうございます!!✨✨今回は書くのに少し苦労したので、ロマの気持ちが充分伝わったならとても嬉しいです……！コメントありがとうございます🥹 (10月11日 19時) (
レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてち(プロフ) - 苦しすぎて泣きました。心情がロマそのものでお話にのめり込みました...ロマ...悲しいよ...！！！素敵なお話ありがとうございます😭😭これからも応援してます！✨😊 (10月10日 16時) (レス) @page24 id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - ぽてちさん» わわわっありがとうございます！✨😭🙏🙏刺さったようでよかったです😊 (8月27日 19時) (レス) id: ebedb84d25 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてち(プロフ) - ドストライクでした...大好きです...！物語の描き方とかストーリーが好きすぎて悶えました。推しをありがとうございます！！！ (8月27日 19時) (レス) @page5 id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏 | 作成日時：2023年8月27日 16時
