金木犀【轟焦凍】 (ページ3)

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「ご注文、お決まりでしょうか？」

ふわりと良い香りがすると思ったら、店員は2人が注文を決めたちょうど良いタイミングで席に訪れ、注文を聞いた

肩甲骨下くらいまである春らしいピンクがかった茶髪をふわふわと巻いて低めのポニーテールにしており、雪のように白い肌にぷるぷるなピンク色の唇が印象的な彼女は、先程と変わらず柔らかな笑顔を向けている

まるでそこに桜が咲いているのでは、と錯覚するほどに綺麗だと焦凍は感じた

「…きくん！轟くん！どれにするの？」

すっかり見惚れてしまっていたんだろう、緑谷に声をかけられ意識をメニューに戻す

「ランチメニューのハンバーグドリアセット、ドリンクはアイスコーヒーで」

「かしこまりました。アイスコーヒーは食前と食後、どちらにお持ちいたしますか？」

「食前で」

店員がメニューを復唱確認する間、焦凍はまた彼女に見惚れてしまっていた

恐ろしいものだ、人は美しいものがあるとつい見入ってしまう

「あの店員さん、綺麗だね」

緑谷も同じ気持ちのようだ

焦凍はこんな風に誰かに見惚れるなんて初めての経験だった

そもそも今まで生きてきた中で、なにかに興味を持つということ自体あまりなかった

そして彼女のなにかに"違和感"を感じた