No.113 ページ13
・
雄英高校一年A組への転入の日は、当初の予定から三日以上ずれ込み、義爛に会ってから一週間後となった。
理由は簡単で、Aが高熱を出してぶっ倒れたのだ。三日近く四十度の熱に苛まれ、解熱したのは昨日の昼頃だった。環境の変化や心労が重なった結果でしょうと医者は言った。
その三日間は担当教科の授業がない教師が代わる代わるで部屋を訪れ、お陰で気配に敏いAは落ち着かない日々を過ごす事となった。世話されている立場なので文句は言えなかったが。
転入当日の朝、相澤は制服を着て最低限のものが入ったスカスカのスクバを持ったAに何度も何度も確認した。
｢うちのクラスはかなり煩いと思うが、一々律儀に答えなくても良いからな。病み上がりだから無理はするな｣
｢うん｣
｢それと教科書は各教科担当の先生に一冊予備を持ってきて貰うから、それを借りろ。ノートはないから、ルーズリーフを後で渡す｣
｢うん｣
｢それと昼食は日替わり定食の食券を買ってランチラッシュに手渡せ。A用の食事を作ってもらうよ様に言ってある｣
｢うん｣
｢それと無理だけはしてくれるなよ。少しでも具合が悪くなったら、｣
｢あーもう分かったってば。中学までは通ってたんだからそのくらい分かる！｣
｢･･････すまん｣
｢全く。相澤サン心配性過ぎないか？結婚して娘でもできたら大変な事になりそうだな｣
｢･･････それは初めて言われたな｣
僅かに顔を綻ばせたヒーローコスチュームの相澤と並び立って職員寮を出る。
学校内でもヒーローコスチュームを着て過ごすのか、と捕縛布を巻き付けた一見不審者の保護者を見上げた。
Aの存在で騒ぎが起きないように早くに出たからか、敷地内は人が全く行き来しない。静かで自然の匂いが強い舗道を歩いていると、相澤が思い出したように言った。
｢そうだ｣
｢なに？｣
｢学校では相澤さんじゃなくて相澤先生と呼ぶ事。分かったね｣
｢相澤先生｣
｢よし｣
五分以上歩いて漸く校舎に辿り着いた。巨大なHを見上げていると、首が取れるぞと相澤に手を引かれた。この人はAの事を幼児か何かと勘違いしているのだろうかと内心疑問に思いつつ、相澤について行く。迷路のような廊下を何度も曲がると、教室が消え、専科専用の教室のエリアに入った。その奥に、両開きの重厚な扉が待ち構えている。
そこは校長室だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エリンギ(サブ垢)(プロフ) - rayさん» コメントありがとうございます。返信が遅れてしまい申し訳ないです。生きがいと言って頂けて光栄です！ (2022年10月8日 22時) (
レス) id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(サブ垢)(プロフ) - あんころさん» コメントありがとうございます。最近ハマっている海外ドラマの影響で夢主の口調が若干アメリカナイズされてきていますが、どうかご容赦を(汗) (2022年10月8日 22時) (レス) @page29 id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて一気見しました！夢主ちゃんの口調とか生き方とか、先生達との関係とか、すっごい好きです！！更新応援してます😍 (2022年10月5日 2時) (レス) @page28 id: 9e178210e2 (このIDを非表示/違反報告)
ray(プロフ) - 生きがいが更新されていて嬉しい (2022年9月17日 18時) (レス) id: 79de0296fb (このIDを非表示/違反報告)
鈴木 - 初心者生さん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただいてとても光栄です。これからもどうぞよろしくお願いします！ (2022年6月25日 20時) (レス) id: a6f881356f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エリンギ(サブ垢) | 作成日時：2022年6月22日 22時
