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なんでこんな所に居るのか聞こうとしたが、声をかけても気付かないくらい集中してたからやめた。
こういう奴のことを秀才だとか天才だとか呼ぶんだろうなとふと考える。
「田中ー、早く戻ってこーい」
「ウッス！今戻ります！」
大地さんから呼ばれ、急いでハシゴを降りてコートに戻る。スガさんが何があったのか聞きたそうな顔をしていた。
「どうだった、誰が居たんだ？あそこ」
「どこから説明すればいいか分からないんスけど、俺らの学年で噂になってる変人とだけは言っておきます」
うわーと苦笑いをしたスガさんだったが、どっちかというと興味が増したような表情をしているので、帰りに問い詰められることは確実だろう。
練習も終わり、もう辺りが暗くなってきた頃、そういえばあいつはいつ帰ったんだろうと、さっきまであいつが居た場所をもう一度覗いてみた。
数時間前と全く同じ体勢で、同じ表情で、ただペンを動かし続けていた。俺が居ることにすら気付いていない姿は機械みたいで、「なんだコイツ」とは思っても、なぜか不快には感じなかった。
「おーい、聞こえるかー」
あいつの目の前で手を振ると、パチパチと数回瞬きをして俺の方を見る。
外を指差して「お前は帰らねぇの？」と聞くと、紙束やらペンやらを雑に鞄に突っ込み始めた。
そもそも、なんでこいつはこんな所に居たんだ？バレーが好きなようには見えんが…。とまぁ考えていると、後ろからスガさんに肩を叩かれた。
「その子が例の1年生？俺は菅原。スガさんって呼んでくれ」
「1年5組、冷泉葵。よろしく、スガさん」
鞄を肩にかけながら返事をしたそいつに、スガさんはびっくりしたように目を見開いた。
「おい田中、お前が言うような子には見えないんだけど……」
それはスガさんが入学式でのこいつの奇行を知らないからだ…とは言えない。話していたら分かるとだけ言っておいた。
「んで、冷泉さんだっけ？なんでバレー部の体育館なんかに居たんだ？
あ、もしかしてバレー部のマネージャーやりたいとか？」
潔子さんだけで十分だと思うのもあるし、こいつがバレー部に入ったら何があるか分からないのもあるので少し不安ではある。
「………された」
「え？」
聞き取れないくらいの声だったので、スガさんがもう一度尋ねる。
「科学実験室、追い出されたから……」
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森谷きのこ(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます。気を付けているところやこだわっているところを褒めていただき、嬉しい限りです。細々とではありますが続けていくので、これからもよろしくお願いします。 (4月4日 22時) (
レス) id: 8dba170153 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 文章の構成、 情景や感情の表現、言葉選び諸々凄い丁寧で素敵でこの作品に惹かれました！楽しく読ませてもらってます！ (3月31日 1時) (レス) @page19 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森谷きのこ | 作成日時：2024年2月26日 10時
