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県内の進学校、白鳥沢や青城になんでこいつは行かなかったんだろうかとは思うが、俺に頭の良い奴の考えなんて分からないからどうでもいい。
冷え切った空気のまま入学式が終わると、あの首席野郎は既に居なかった。教室に戻る途中、何となくあいつの居る5組を覗いてみると、端の席に座って本を読んでいるのを見つけた。
分厚い本を漫画でも見ているみたいなペースで読み進めるあいつは正直理解できなかったが、入学式で見たよりも年相応の女子っぽい顔をしているなと思った。
俺が言うのはアレだが、誰かに恋でもしているみたいな顔。しかも、その顔が目の前の本に向けられてるってのは俺から見ても訳分からなかった。
誰かに見つかる前に離れたから詳細は知らんが、どうやらあいつはヤバすぎて友人を作るどころか話しかけられてすらいないらしい。
入学初日で噂が立つのはただのヤベェ奴だと俺は思うので、できることなら関わりたくない。
数週間は経ってあいつのことも忘れてきた頃、幸か不幸か、あの首席野郎と直接話す機会が訪れた。
部活が始まる前、モップをかけたりネットを設置したりしている途中に、誰も居ない筈のギャラリーから、小さなくしゃみが聞こえた。
「旭、お前見てこいよ」
「嫌だって。もし何かあったら俺どうすればいいの」
2年の先輩達が誰が見に行くかの押し付け合いをしている間に、俺はハシゴを使って2階に上がった。
誰だと思いながら辺りを見ると、床に大量の紙がばら撒かれていることに気が付いた。紙にはアルファベットやら数字やらの文字が一面に書き込まれており、見ていて気持ち悪くなりそうだ。
それを慌てながら集めていたのが、あの首席野郎だった。
「ん？…あぁ、拾ってくれたのか、そこに置いておいてくれ。
できるだけ邪魔はしないようにするよ」
こっちを一瞬チラッと見たかと思えば、何事もなかったように紙を集めるのに戻ろうとする。
俺のことなんか眼中にも入れてねぇみたいな行動に腹が立ち、こいつより先にこの紙を拾いきってやろうという対抗心が湧いた。
数十、いや、百はありそうな紙の束を１つに纏めてあいつに渡す。
「お前のだろ。コートに落ちてきても困るし、ちゃんと持っとけ」
短く「ありがとう」とだけ言ったそいつは、紙の束をクリップで留め、床に座り込んでボールペンでまた何かを書き始めた。
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森谷きのこ(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます。気を付けているところやこだわっているところを褒めていただき、嬉しい限りです。細々とではありますが続けていくので、これからもよろしくお願いします。 (4月4日 22時) (
レス) id: 8dba170153 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 文章の構成、 情景や感情の表現、言葉選び諸々凄い丁寧で素敵でこの作品に惹かれました！楽しく読ませてもらってます！ (3月31日 1時) (レス) @page19 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森谷きのこ | 作成日時：2024年2月26日 10時
