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こうして近くで見ていると、いかにただ生きているだけではしない動きをしているのか分かるな……。
きっかけも何も無ければ、一生見ることも聞くこともなかったであろうものを見てそう考える。
センスというよりは練習量の差だろうか。上手い下手の差が分かりやすい。
勢いの有無、バランスがきちんと取れているか、どれだけボールを見ているか。ポジションの名前すら覚えていない私の目線ですら、得られる情報は山ほどにあった。
誰がどんな動きをしているのか、それだけをぼうっと見続けていると、小さな違和感に気が付いた。
名前は知らないが、右足を庇っている奴がいる。雰囲気的には上級生だな、身長の高い長髪と喋っている奴……。
身長の割にジャンプが低い、着地の時に顔を歪める、歩く時の重心が左に偏っている。
……やっぱり怪我か。
ボールを打ち終わって歩いているところだったので、駆け寄っていって服の端を掴み、壁際まで連れて行く。
救急箱は……、あぁ、あそこか。
救急箱の置かれていた椅子に座らせ、相手の前に膝をつく。
「おいお前何し……」
「……足。怪我してるだろ。出せ」
田中の文句が飛んできたが、今はそんなことを聞いている暇はない。処置をするならさっさとやらないと。
「あ、あぁ……」
困惑したような表情だが、足は素直に出してくれた。
足首が少し腫れてる。捻挫か？
脱脂綿やワセリンが無かったので、代わりに薄くしたガーゼをアキレス腱や足の甲に置き、テーピングで上から挟むように貼っていく。
足首から足底、足の甲で交差するような形でテーピングを貼ると、よく写真で見るような完成形ができあがった。
医学の本に載っていた簡易の応急処置だが、どうやら間違ってはいなかったらしい。
「大地、お前怪我してたの……？」
「今日の朝くらいから痛んではいたが、練習できない程じゃなかったからな」
「俺全く気付いてなかった……」
顔を青くしてる長髪は放っておいて、使った道具を片付けて元の場所にしまい直す。すると、
「あ！」
と誰かの声が響く。声の方を見ると、誰かが打ったのだろうボールが私の方に飛んできていた。
飛んできたものを弾けるほど強くはないので、丸まっていた上体を反らせて顎を上げ、ボールの表面に身体が当たらないように避ける。
壁に当たって威力が落ちたボールをキャッチすると、私の方に手を伸ばす誰かや焦ったような表情の人達の目が驚愕の色に染まっていた。
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森谷きのこ(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます。気を付けているところやこだわっているところを褒めていただき、嬉しい限りです。細々とではありますが続けていくので、これからもよろしくお願いします。 (4月4日 22時) (
レス) id: 8dba170153 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 文章の構成、 情景や感情の表現、言葉選び諸々凄い丁寧で素敵でこの作品に惹かれました！楽しく読ませてもらってます！ (3月31日 1時) (レス) @page19 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森谷きのこ | 作成日時：2024年2月26日 10時
