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知りたかったことを知ることができたというのは気分が良いもので、多分私は入学してから一番機嫌が良かった。
多少話すクラスメイトに、機嫌が良いと言われるくらいには。
いつもよりふわふわとした気分のまま授業を終えて帰り支度をしたところでハッと気付く。昨日の今頃に退部したおかげで行く場所が特に無い、ということに。
昨日の集中と感覚が忘れられず、また体育館に赴いてギャラリーによじ登る。昨日と同じ場所に腰を下ろして、同じ体勢でペンを動かし始めた。
段々と下が騒がしくなってきたのを感じてノートから視線を外すと、どうやら2人で向かい合ってボールを打ち合っている。レシーブだったか、スポーツはあまり得意ではない。
まぁでも、こうして眺めているのは嫌いではない。人が何かに向かって努力するところを見るのは好きなほうだ。なんとなく、人間の美しいところが垣間見えるような気がするから。
柵に腕を乗せて見下ろすように眺めていると、一人としっかり目が合った。
……名前なんだったか。昨日の奴、……そうだ、田中だ。誰かがそう呼んでいた気がする。
気のせいと思ったが、そうではないらしい。その証拠に、あいつの顔面にはボールが衝突していた。うわ……
「龍ーー！！？？」
これだけ離れていても頭に響くような大声に思わず手で耳をふさぐ。
ボールが当たっただけ、そんな大事にはならない。実際にあいつはピンピンしてるじゃないか。
それでも、自分が見ていたせいで集中を阻害してしまったか？とは思ってしまう。何となく別の人を見て気を紛らわしていると、どうやら休憩時間に入ったらしい。
やれることがあるとはいえ、好きな玩具を取られた子供のような気分だ。退屈さを感じて髪の毛を弄っていると、スガさんが私に呼び掛けてきた。
「練習見るなら、下降りてくればー？」
邪魔になるのでは……とも思うが、他ならぬ部員からの誘いだ、断る理由はどこにもない。
散らかしたものを片付けて下に降り、隅の方に座り込んだ。
私がのんびり荷物をまとめている間に休憩なんて終わっていたらしく、次の練習に入っていた。
号令をかけていた人がスパイク練習だと言っていた。見ていて面白いものかは分からないが、少し楽しみではある。
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森谷きのこ(プロフ) - ひよりさん» コメントありがとうございます。気を付けているところやこだわっているところを褒めていただき、嬉しい限りです。細々とではありますが続けていくので、これからもよろしくお願いします。 (4月4日 22時) (
レス) id: 8dba170153 (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 文章の構成、 情景や感情の表現、言葉選び諸々凄い丁寧で素敵でこの作品に惹かれました！楽しく読ませてもらってます！ (3月31日 1時) (レス) @page19 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森谷きのこ | 作成日時：2024年2月26日 10時
