潰してほしいんだ？

花蘭という歌い手。 ページ44

「ねえ、歌い手って知ってる？」

ふと、誰かが言った。



歌い手か。



…私は、昔、一度だけ歌い手をやっていたことがある。

花蘭って名前で。

投稿したのは、2曲だけ。

最初は、普通に歌ってみたを出した。

これが、すべての根源ともいえた。


そらるさんたちの出した新作よりも上に行ってしまい、花蘭はカテラン1位を取った。

そのことは素直にうれしかったんだけど。


そらまふのリスナーに叩かれた。



すっごく苦しかった。


いくらなんでも、私がアンチや悪口に対する免疫が少しはあるからって、苦しくないわけない。


その時はまだよかった。まだ聞いてくれて、かばってくれる人たちがいる。それが励みだった。


その人たちのためにがんばろうって思えた。

だけど、つぎに出した、自作の曲が、前の日に出したまふまふさんの曲と似てて、これまたたかれた。今までかばってくれていた人たちも、アンチへと変わった。そらるさんやまふまふさんも、

パクられた。

ってツイートをして、私の居場所は完全になくなった。

だからやめたんだ。


これ以上歌ってたって意味がないから。


居場所がないから。


今は、週に一回ぐらいカラオケ行って歌うぐらい。


ぼーっとした私には見向きもせず、彼方さんは話を続ける。


「俺たち、歌い手やってるんだけどさ。そらるとまふまふって名前で、After the Rainってユニットなんだけど。来月、ライブがあるんだ。すごいでかいやつ。歌い手めっちゃ集めてやるんだ。チケットあまってるから、こない？」


ライブ…、か。

Twitterの花蘭のアカウントは、ログアウトしたまま。もし、歌い手続けてて、有名になってたら、私も呼ばれたのかな。

「ライブといえば、花蘭さんはどうなったん？」



・・・なんでくろちゃんが知ってるの？




「・・・・花蘭？」


私のつぶやきに気づいた真冬君が教えてくれる。


「僕たちが今回ライブに誘った歌い手さんだよ。まだ返事は来てないけど。」


・・・・ライブ、誘われてたんだ。



「でも、たぶん、返信は来ないか、やりません。だよな。俺たち、花蘭を傷つけたし。」

「花蘭さんって、2回だけ曲を投稿したんだよ。結構昔にね。一回目は普通に歌ってみただったんだけど、すっごくうまくって、ぼく、リスナーだったんだ。僕たちよりもカテラン上で、一位だったんだよ。それでアンチもできちゃったんだけどね。2回目は、自作の曲。今思えば、この時の僕たちの言動が軽率すぎたんだよね。」

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