第5話「悪童の園」 ページ7
あれから私はキリヲくんを養子にした。
キリヲの母はブルブル怒りに震えながら書類にサインしてくれた。
素直とは、いい人だな。
まあ、強制なんだけどね。
「え、えと。なんで僕を引き取ったんです？」
明らかに困惑したようにキリヲくんが話す。
まあまだヘ ンタイとして目覚めてないからな。当然か。
だが、その顔から「恐怖」だとか「警戒」とかは全くなかった。
よっぽどあの家に執着がなかったのだろう。
「だって、キリヲくん嫌な扱い受けてたじゃん。
だから、あの家から出してあげたいなって思って。
というか、もう敬語じゃなくていいんだよ？私はもうあなたのお母さんなんだから」
私はキリヲくんの頭を撫でながらそう話した。
キリヲくんは頭に手を置かれた瞬間ビクッと動いた。
しかし、そこからは戸惑うように私の手を見つめながらも心地よさそうにしていた。
もしかして、厳しい家庭だとは思っていたが、撫でられた事も無いのだろうか。
「そうやったんでs……そ、そうやったんか。
え、えと。母様」
「そんな言い方じゃなくってさ。もっと気軽に呼んでいいんだよ。
私は名家の生まれってわけじゃあない。ただのお母さんなんだから。
あ、と言っても。勿論言いやすい呼び方でいいんだからね？」
そう言うとキリヲくんは少し黙った後、こう言った。
「じゃ、じゃあ。お母はん」
その時のキリヲくんの笑顔がもう、少し恥ずかしそうに俯いてはいたけれど、
幸せそうに目を細めていて、
可愛くて、可愛くて。
私はこの子の母親になるんだと心から思えた。
-------------------------
そして少し日が経ち。
キリヲくんはこれからも悪童の園に通うことになった。
なんでも、仲の良い子がいるから自分だけやめて置いていけないらしい。
まあ、例のあの子だろう。
私は我が子のことが心配で、ひっそりと悪童の園を覗きに来ていた。
教師は「アミィ家が何たら」とは言わないものの、
「期待しているお母様にほにゃらら」とか言っているようだ。
変わらない。
そしてキリヲくんはいつも例のあの子と遊んでいる。
これがいつか壊れてしまうのかと思うと、少し寂しい。
「これ」とはキリヲくんの事では勿論ない。2人の関係の事だ。
だが、私はキリヲくんがヘ ンタイになるのを止める気は無い。
そもそも、それが目的だからだ。
「だけど」
パキャアン、ガラスの割れたような音が上から響く。
深い深い、底も見えないような谷に居た私の手元には、綺麗な耳飾りが握られていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
通りすがりのところてん - 応援してます‼︎頑張ってください‼︎ (2022年1月16日 23時) (
レス) @page16 id: 4e011b514c (このIDを非表示/違反報告)
ゆずチキン(プロフ) - キリヲ大好きすぎ侑明奈さん» ありがとうございます！頑張りますね！ (2020年3月11日 16時) (レス) id: b7017b0d47 (このIDを非表示/違反報告)
キリヲ大好きすぎ侑明奈(プロフ) - 貴方の作品、お気に入り登録しましたよ！これからも頑張ってくださいね！(^○^) (2020年3月10日 23時) (携帯から) (レス) id: 615cf5fcc5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずチキン(プロフ) - キリヲ大好きすぎ侑明奈さん» コメントありがとうございます！私もキリヲ先輩大好きです！！えっと、貴女の作品ですか？これから見てみますね！お互い更新頑張りましょう！ (2020年3月7日 23時) (レス) id: b7017b0d47 (このIDを非表示/違反報告)
キリヲ大好きすぎ侑明奈 - キリヲ先輩めっちゃ大好きです！もっとキリヲ先輩が出てくるお話を作ってください！ぜひゆめの作品｢キリヲ先輩と人間ちゃん｣もみてください！お願いします！そのお話を見たらできればコメントや評価もしてください！お願いします！ (2020年3月4日 11時) (携帯から) (レス) id: 615cf5fcc5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆずチキン | 作成日時：2019年12月2日 6時
