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ヌナという季節に溺れた一年だった。
今まで何年と四季と共に時を老かしていっていたが、あの夏から一年、俺は彼女という季節に溺れた。
ヌナは一体この一年で、誰に溺れたと言ってくれるだろうか。
とは言っても夏の初めの頃は、ヌナとは違う別の子を自分の家に出入りさせていた。
ぽてっとした唇に、うまく脱色されたブロンド、コンバースをよく履いていて、常に煙草がカバンの中に入っている
そんな子だった。
「オッパ、好きだよ」と言いながらブロンド髪を乱れさせるそんな姿に俺は夢中だった。
ベランダにある灰皿も、真夜中にたった一人で夜風に当たりながら煙草を吸う彼女のために置いたものだった。
「人事異動は、将来が期待されてる優秀社員が対象になる事もあるんだよ。」
お互い顔は知っている、そんな関係だったヌナと共に部署を移る事になったのはちょうどその頃だった。
綺麗な人だな、とは思っていた。でもそれ以上は無かった。
なにより、タイプでは無いな、と感じていたから。
そんな時に、魔が差した。
自分の好みじゃないと外壁を建てるには、かなり詰めが甘かったと今は思う。
関わりを持つにつれて、なぜか急激に彼女を目で追うようになった。
小さく笑う口に、艶やかに揺れる黒髪、常にハイヒールを履いて、たまに眼鏡をかけてパソコンに向き合うその姿を、
目で追うようになった。
そして仕事の打ち合わせを口実に、二人での飲みの場をつくってみるも、さらに惹かれた。
ヌナは一言で言うと、上品な人だった。そこに惹かれた。
そこで俺は初めて気付いた。
ブロンドの彼女とヌナとの差が、魅力的に見えているのだと。
だけど俺がヌナの唯一の汚点に気付いたのも、その時だった。
「これはね、婚約指輪。」
そう幸せを噛み締めるように綻ぶ目の前の彼女に、何故か欲が湧いて、色んな衝動に駆られた。
『じゃあ、ヌナもう結婚すんの？』
「うん、まだわかんないけどね」
誰かの所有物は、より魅力的に見えるという心理学は、いかなる時も正しいと、身に染みて感じる。
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かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
