8 ページ8
ドンヒョクはテレビを付けっぱなしにはしないし、髪も濡れたままにしない。
あの人よりワントーン明るい茶髪の君は、そう簡単には息が切れないし、私の表情の変化を楽しむ余裕だってある。
だからこそ、遂に息が上がってきた君の息遣いが静寂の中で響くその時は、なんとも言えない感情が私を昂らせる。
私はとにかく、あの人とは違う全てにギュンと心が持っていかれて仕方なかった。
『ドンヒョクはさ、私のどこが好きでこんな事してくれるの』
HC「俺に素直なとこと、俺の前だけでよく泣くところ」
君にそう言われて初めて気が付いた。
君の前ではよく泣いているな、と。
私が上司に怒られた時なんかは、皆が帰ったあと、暗くなったオフィスで、二人っきりになった時だけ彼に弱音を吐いた。
ドンヒョクもドンヒョクで、そういう日は必ず私が帰るまで帰らないのがいけなかった。
私が泣くと、その温かい手で涙を拭いてくれるし、頭を撫でてくれる。
そして170%の温かさで、私を温かくしてくれる。
「泣かないの」と頬を撫でながら私に語りかけ、私が口を開くと「あれはアイツが悪いよ」と言った。
私が何も言わなかったら、ドンヒョクは優しい顔をして黙って涙を拭い続けた。
HC「あの人の前でもよく泣くの？」
そう言って、私の左手の薬指のソコの部分に爪を立ててカリカリと往復させながら、私の唇を啄んでは離して、を繰り返した。
『どうだろう』
今は考えたくないかな
そう言って君の髪に指を通すと、分かりやすく目尻を下げて耳を赤くして声を出さずに笑った。
体力はあるのに、すぐ耳を赤くしてしまうそんな若さが好きだった。
HC「これからも、俺の匂いになりにきて」
そして次の日の朝初めて私は、ドンヒョクに婚約相手がマークだと告げた。
すると、「マクヒョン？！」と眉をしかめて驚くものだから、「言ってなかったっけ」と私はシラを切った。
まさか私の婚約相手が会社の人間だとは到底思っていなかったらしい。そりゃそうだ。
HC「マクヒョンかー、そんな喋った事ないけど」
『なに、意外？』
HC「いや、俺と真逆だなって」
そう、マークとドンヒョクが真逆だと言うことは私だけが納得している事じゃない、誰が見てもそう思う事なのだ。
しかも傍から見て幸せにしてくれそうな男は、間違いなくマークの方だ。
HC「こんなの、マクヒョンが知ったらどうなるだろうね」
さあ、どうなるだろう。
私は利己主義者だからわからないよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
