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愛は時に醜い。美しいばかりじゃない。
それはドンヒョクが教えてくれた言葉だった。
愛というのはゼロサムゲームで、一方が愛を得た場合、もう一方が愛を得られずに同じ分だけ損をする、利害の総和がゼロになる。と誰かは言った。
愛とは、利己的な愛の持ち主と利他的な愛の持ち主とで分かれている。と誰かは言った。
そして「自分だけ」の利益、幸福を目指す利己主義者が得するようにこの世界はつくられている。と誰かは言った。
いつからだろうか、私が利己主義者になったのは。
きっとそれは、丁度一年前の夏、うちの会社で大掛かりな人事異動が起きた年だろう。
その人事異動で私と共に他の部署に飛ばされた人物こそが、ドンヒョクだった。
HC「俺ら、何かダメなことしちゃいましたっけ？」
『人事異動は、将来が期待されてる優秀社員が対象になる事もあるんだよ。』
HC「マジか。ラッキー。俺何もしてないけど。」
「頑張りましょうねー」と私に向けられた拳を、黙って私の拳で突き返すと、ドンヒョクは手の甲で口を抑え、顔を逸らして笑った。
ドンヒョクは本当にマークと真反対の人物だった。
それは周知の事実だったけど、いざ彼と関わってみると二人の違いが明確すぎて興味を唆った。
何故かもう気づいた頃には敬語が抜けていたし、飲みに行っても彼は
「俺の事元々どんな印象だった？」とか
「幽霊って信じる？」とか
「ヌナって学生時代モテたの？」とか
仕事の話を一切しようとしない。仕事が本当に嫌いなんだとか。
彼の伏し目なんてほぼ見た事が無いぐらいに、彼は私に穴が開きそうなぐらい見つめてくるし、平気な顔して私の手に触るし、髪にも触れるし、指に触れる。
そして彼の目に初めて指輪が留まったのはその時だった。
HC「この指輪、なんなの？」
『これはね、婚約指輪。』
HC「えー、ヌナ婚約してんの？なんで？」
今思えば、この頃から私は好奇心という名の恋心をドンヒョクに抱いていたのかもしれない。
あまりにもあの人と違いすぎるから、あまりにも君ははするすると縄を潜って私に近づいてくるから。
その段階を踏まないその若さが、私には丁度いい刺激になってしまって。
この頃だっただろうか。
あの人への気持ちが薄れてきたのは。
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かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
