27 MK ページ27
またそこから一年、二年。
人生の最高到達点へ登っている感覚が常にあった。
毎日同じ寝床に潜り込んで、同じものを食べて、同じ景色を眺めて、ゆっくりお互いの人生を交わらせていく。
当然お互いに対する欲は止まらなくて、それを満たす事の出来る時間だけが増えていく。
度々思いに耽ける。
こんな順調に、幸福だけで埋め尽くされる恋愛でいいのかと。
少し汗ばんだ身体を二人ベッドに預けて横になり、俺の鎖骨の辺りに顔を埋める彼女の頭を撫でながらそんな事を毎度考えた。
熱が籠りきったお互いの身体は、今すぐにでも冷気を欲しているはずなのに、それに反してお互いの身体からは一ミリも離れようとはしない。
『暑いでしょ』
｢ちょっとだけ｣
『水持ってくるよ』
ただお互いがくっついているから暑いだけなのに、その真相を告げようとはしない俺は、すっかり雰囲気に酔いしれて、理性を失っている。
水を受け取り喉に流し込む彼女を俺はただじっと見つめる。
時には、滑らかに動く喉を眺めたり
時には、彼女の額に張り付いた髪の毛を整えたり
時には、まだ眠りにつきたくない、と彼女に告げたり
香水、ピアス、ネックレス。
身体に目をやると彼女の素肌には、数年前には無かった煌めきや雰囲気に纏われていた。
俺がプレゼントしたものを全身に纏う彼女を見ると、身体がカッとするほどの幸福感が押し寄せた。
そんなのこちらからしてみれば、
“もう私は貴方のものでしかありません。”と全身で伝えられているようなものだった。
だから俺はそれに応えをするつもりで、彼女の身体に手を滑らせ更に呼吸を乱す。
“もう貴方は私のものでしかありません。”と。
そしてその欲望の仕上げとして贈ったのが、
俺が彼女に贈った最後のプレゼントであるシルバーの指輪だった。
彼女はあのレストランでそれを受け取った時、口に手を抑えながら小さな涙を流していた。
プロポーズの言葉は何だったかなんて、緊張しすぎていたせいかかなり薄い記憶しか残っていない。随分とかしこまったプロポーズではなかったとは覚えている。
涙を流す彼女を目の前にすると、俺まで目が濡れてくるのがわかった。この上ない幸せに襲われて。
俺は、この人と人生を共にしたくて仕方が無いのだと。
そしてその幸せは、そう簡単に揺るぐものではないと思っていた。
二人の時間が少し減ったとしても、その幸せは揺るぐはずはないと思っていたのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
