26 MK ページ26
その日の昼、また彼女はギターに触れていた。
夏になってからは、冷房が効いているリビングで彼女とギターに触れる事が多くなった。
もうギター初心者では無くなった彼女は、俺がそばにいなくても音が綺麗に鳴るようになった。
たどたどしくはあるものの、その小さな身体で大きなギターを操る姿はとても微笑ましい。
だけど、俺がいないとダメだったはずの彼女が少し恋しい気もした。
色んな感情が混ざった挙句、傍でギターを奏でる彼女の肩からズレ落ちたキャミソールの紐を拾う事しかできないのだけれど。
「これ、指これであってる？」
『合ってるよ、でも親指も使った方が抑えやすいかも』
「どう？こう？」
一度スマホを置いて彼女からギターを受け取り手本を見せると彼女は、納得した表情を見せてから、俺の肩に頭を乗せた。
「まぁくー、なんか弾いて」
『なんか？言ってみて』
「なーんでもいい」
『ヤー…正直それ一番困るんだよ』
悩みながらもふとした思い付きで、二人で車に乗る時によく流していた洋楽を奏でた。
だから少しミスをすると「あ、今間違えたね」と彼女に口を挟まれてしまって少し笑ってしまう。
「うまいね、やっぱり」
『だって俺は、Aの先生だから』
「そだね、私マーク先生の声好きです」
『おー、先生嬉しいです』
「マーク先生は、私の声好き？」
彼女の方を見ると、思ったより顔が近くにあって咄嗟に視線が、目、鼻、口、と下に降りる。
彼女は俺が思っている何倍も愛しさに溢れた表情で俺の事を見ていた。
「好き？」と聞く彼女にずるずると少しずつ引き寄せられていくきがした。
『うん、全部好きだよ』
ちょっと見つめ合ってから、最後には唇に視線を落として一回だけ軽いキスをした。
唇が離れても離れないままの二人の顔の距離は、早くもう一度、といったような感じで。
「もっと、」
そこから過ぎていく時を防ぐように重ねた唇は、なかなか離れなかった。
さっきまで部屋に響いていたギターの音色は消え、耳に入ってくるのはエアコンの音と、蝉の鳴き声と、自分達の唇の音だけ。
だけど俺は、三番目の音以外を遮断したくて仕方がない。
でもこんなに近くにいるのに近くにいる気がしないのは、きっと欲しがりすぎているせいなんだろう。
愛されたい、包まれたい、隙間なく埋めてほしい。
彼女の腰と顔の輪郭に触れる俺の手に募る思いはそんなものばかりで。
『一緒に、住もうよ』
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かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
