3 ページ3
愛は綺麗で、美しい。
それはマークが教えてくれた言葉だった。
愛とは「他動的な活動」であり、愛を「与えること」によって愛を「生産」することができる。と誰かは言った。
愛とは他者の中に能動的に入っていくことであり、「結びつく行為」においてこそ、私はあなたを、自分自身をそして他の人の全てを知る。と誰かは言った。
愛の行為、私自身を与え、他者の中に入っていく行為において、私は私自身、相手と自分の両方を発見する。と誰かは言った。
私がマークから愛を「与えられている」と気付いたのは、いつもの飲みが回数を積んできた頃だった。
最初の頃なんかは、部署が被っていたのもあり私達は仕事の話ばかりで、敬語も専ら抜けなかった。
どちらかと言うと、抜きたいけど抜けなかった。
マークはとても仕事にストイックな人だったから、
「仕事」と「プライベート」で言う仕事側に位置づいているであろう私に対してマークが敬語を抜く事なんてありえないんだろう、と勝手に杞憂していた。
だって飲んでいる時は本当に目が合わないし、合ったとしても瞬時に視線はハイボールグラスに移されたし、私が見てきたのは彼の伏し目ばかりだったから。
だから、彼の口から「そろそろ、タメでもいいんじゃないんですかね？」という言葉が出た時は、持っているグラスを落としそうになった。
そしてそこからは、よく彼と目が合うようになった。
彼がハイボールグラスに口を付けているその瞬間も、マークの目は私を捕らえるようになった。
そしてその視線から、彼が私を好いてくれていると気付くのはそう難しい事ではなかった。
そして私も、その視線に恋をするようになった。
でも今思うと、それなりに前から彼に心惹かれていたのかもしれない。
帰り際「じゃ、またね」と手を振る彼を見ると、次はいつ誘ってくれるんだろうって、無意識に期待をするし、
勤務後に彼との予定が入っている日の午前中は、それはそれは甘く感じた。
その感情は、彼からの視線に気付く前からのものだった。
彼の優しさにまた甘えたい、彼の声がまた聞きたい。
そう思えた男性は彼が初めてだった。
それは間違いなく、恋だった。
その出来事を境に、事は波が流れるように進んでいき、その飲みが仕事からプライベートの飲みに昇格したのはもちろん、私の渇欲が飲みだけじゃ満足できなくなった。
それにいち早く気付いたのも彼だった。
気付いたら好きになっていた。
これが限りなく近しい。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
