17 MK ページ17
ベッドに身を預けた。灯りは付けなかった。
シーツに手を滑らせても見つかるのは温もりが残っていない無駄に大きい空白とシワだけ。
手の甲を額に当てながらそんな事実に落胆しつつも、密かに玄関から物音がするのを待っている。
エプロンを掛けた彼女がリビングから姿を見せてくれるその瞬間は、それはそれは愛おしかった。
時にはしゃもじや、箸を片手に ｢おかえり｣ と。
そして機転を利く君はそそくさと俺の鞄やジャケットを回収して、寝室にあるクローゼットに向かうけど、
俺は俺で、とにかく今は彼女に触れていたい、という自分のエゴがゆえ、釣られて寝室に向かってしまう事がほとんどだった。
ハンガーを手に取る後ろ姿を見据えて、後ろから彼女の肩に頭を乗せ、少し会話をする。
そこでぼそぼそ喋んないで、と笑う君を、まずは求めた。
とにかくなにか囁いて、君を笑顔にして、次にキスを求めた。
彼女が身体を俺に向き直すと共に、俺の首元に伸びるその白い腕に、幸せを感じていた。
-いやー、ヌナってマクヒョンには甘いんですねー
いつかの通勤中、チョンロから送られてきたそんな一通のメッセージに、嫌な予感がしたと共に二日酔いの頭痛がソレに拍車を掛けた。
即座にトークを開くと同時に送られてきた動画には、案の定机に突っ伏した自分が映っていて。
ひとつため息をつき、イヤホンが接続されている事を確認してから動画を再生すると、途端に耳に流れてきた居酒屋のがさついた音声に、ひとまず眉に力が入る。
“ マクヒョーンさっきの話の続きして”
“ 家帰ってからヌナになにしてもらうんだっけ？”
“ …ヌナ〜？誰〜…”
“ ほら、Aヌナだよ、さっき話してたじゃん”
“ あ〜…A〜…”
“ マクヒョン家帰ってから毎日ヌナに何してもらうの〜？”
“ 何って…別に何も〜…”
“ ほら、ネクタイの話さっきしてたでしょー？”
“ あ〜…ネクタイ解いてくれるんだよAが…”
“ はいはいもっと詳しくー”
“ だから〜…俺のネクタイ解きながらキスしてくれんの…”
“ ははっばっかじゃないのこのヒョン笑”
動画を消してくれと懇願しても、マクヒョンが自分で口滑らしたんだよ、と難癖を付けられて、イライラしていた。
今思い出す事じゃないとは思うけど、その時の俺と今の俺は、一体何が違うというのか。
早くこのベッドに戻ってきて。
俺が灯りを付けるまでに、俺が自分でネクタイを解き終わる前に、ここへ戻って来て。
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かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
