11 HC ページ11
午前二時。
ビルと月の明るさは絶えずとも、道路の明るさは絶え始めてくる、そんな時間。
ブロンドの彼女がたったひとり月の下で煙草を咥えるいつものひとときに、その時初めて俺は邪魔を入れた。
彼女になんと言おうか。
安定の愛情より、急激な好奇心に負けた。
なんと言うか今俺は、違う人を追いかけたい。
こう素直に告げる勇気は何故か無くて。
体を掠る初夏のぬるい夜風は、ことを切り出すには余りに中途半端で、輪郭がはっきりしない夜風だった。
おまけに風に乗せて左からやってくる煙草の煙が鼻にツンと刺さって、居心地が悪かった。
『飽きたわ、ごめん』
正直遊びだったし。
空気を相手に呟いたかのように、夜の景色に向かって言葉を零した。
悪すぎない程に、丁度よく、丸め込みたい。
そう思って頭で言葉を組んだつもりだった。
結局、自分の腐ったプライドが邪魔をした。
偉ぶる、調子に乗る、強がる
正直どの言葉のピースも、このふざけたプライドのマスには嵌りそうで嵌らない。このマスは形が定まらない。
そんな臨機応変するマスによって組まれた言葉だった。
新しい恋の道を見つけて有頂天になっていたのだろう。
このプライドのせいで、適当でありながら浅薄で残酷な言い訳しか、その時の自分には出来なかった。
彼女にとってこの言葉が残酷だと、勝手に決めつけて同情するのもおかしな話ではあるけれど。
恐らく俺はこの攻めてもの同情を、自分自身に情けが無い訳では無いと根拠付ける唯一のモノにしているのだと、自分でも気付いてはいた。
「最後にもう一回だけ」と俺の手を引いて乱れたシーツの上へと誘う彼女の艶やかさに、まだほんの少し自分の中に残っていた彼女へのリビドーが掻き立てられて。
自分の中の何かが迸ったと共に、
赤い唇に触れ、
もう随分薄くなった首筋の印にもう一度口を這わせた。
そしてふと、彼女の顔を見た。
そこで俺は始めて、彼女の涙を見た。
嫌いになれなかった。間違いなく。
居た堪れないなんて、とても言えない。
だけど、普段目を潤ませもしない子が、鼻を赤くして泣きながら、攻めて今だけは、という趣で俺の髪に触れている。
もう自分には為す術が無かった。
頭が回らなかった。
もう俺のことは、貶して、罵って、軽蔑してくれと
嘆願しながら、最低限の熱い口付けを施すしか
術がなかった。
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かげろう(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。シリアスめなものを書くのは初めてなので、ちゃんと皆さんに満足して頂けているか心配だったんです…泣本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。小説は、幼い頃から全く手につかないんです。毎回文字で酔ってしまって…笑 (1月1日 5時) (
レス) @page10 id: 78c5f6ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
み - 素敵、日頃から小説を読まれたりするんでしょうか？何年ぶりか占ツクを覗いてみたらこんな素敵な作者様に出会えて感動。更新楽しみにしてます (12月30日 3時) (レス) @page10 id: af8ac8d205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげろう | 作成日時：2023年12月19日 3時
