プールサイドの白鳥 (ページ25)

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Ryuto side

見とれていた

そう言ったら、嘘になるのかな

先生をあの子に重ねていた

今思えばすごく不自然な時間
口を割ったのは、先生の方だった…

「作間くん」

先生は俺からもらったプリントを机に置き、

俺の方をまっすぐに見た

その目はびっくりするほど真っすぐで

先生を通してあの子を探していることを

見透かされているようで身構えた

「わかんないけどさ、頑張ったら頑張っただけ手に届くと思うの」

「え」

急な一言

でも

あの女の子が俺にくれたまなざしを

この人もくれるんだって

がりさんとかみたいにハイセンスなものを持ってるわけじゃない

瑞稀くんみたいに声がすごくきれいなわけじゃない

優斗みたいに面白く皆の話をさばけるわけじゃない

はしもっちゃんみたいに社交的ってわけでもない

Hi Hi Jetsに後から入ってできたことは『調整役』でしかなくて

去年は、現場に慣れること、グループとしての活動に慣れることに精いっぱいで

コツコツ頑張ることしかできなかった

でも

「頑張ってる」ってことを肯定してくれる人が

ここにもいたんだ

あぁ

この人に

あの女の子が

あの日

電車の中で

俺の頑張りを見てくれていたように

先生にも俺を見ててほしい

「って、授業ダメダメだった私が行っても説得力ないか…」

先生は

ちょっと困ったようにそう笑う

迷子だの

おっちょこちょいだの

言ってたけれど

やっぱり“先生”だ

俺の頑張りを肯定してくれるこの人の“頑張り”を俺もちゃんと見ていたい

「先生も“先生”頑張っているじゃん、今日の授業、俺は結構面白かったです」